アハトゥンク!
今回の講義は砲の構造についてだ。 | |
やぼーる!! | |
砲については前回同様特別講師の二人に来てもらった。よく話を聞くように。 | |
今回の講義で貴様を砲兵に一歩近づけてやる。 | |
よろしくお願いします!! | |
まずは基本的な砲の構造からだ。砲は幾つかのパーツからなるが、その根本となるのが砲身だ。砲弾を収納し、砲弾を加速する砲の中枢。砲の性能の大半はここで決まると言っていい。
砲身を見るうえで重要なのが砲身長、口径だ。これが何かわかるか? | |
砲身長は砲の長さですよね。でも口径がよくわかりません。砲の穴の大きさだという事はわかるですが、表記がバラバラです。
88mmは大きさを直接表しているのはわかりますが、38口径がわかりません。38口径は38mmなんでしょうか? | |
口径は砲弾の直径を表す数値だ。基本的にはmm表記で間違いない。
mm表記のない38口径や45口径と言った表記は基本的に拳銃で使われ、砲では使わない。 1口径は百分の一インチ。38口径だと9mmになる。 | |
なるほど。たしかに38口径や45口径は拳銃の説明で聞いた単語でした。 | |
砲身長は砲身の長さ。これで間違いないが一つ注意しなくてはならないのが、砲身長には薬室、砲弾を収納する部分も含まれる所だ。
薬室の長さが大きければその分砲身長も大きくなる。 |
口径と砲身長の比を口径長と呼ぶ。
88mmで56口径長だと、砲身が口径の56倍の長さという事になるな。ドイツの砲の場合だと砲の名前の後半にあるL/の後の数字が砲身長を表している。 ただし口径長は省略されて口径と表記される事がほとんどだ。基本的に砲の話で口径と表記される時は口径長を表すと思っておけ。このコーナーでも基本口径長は口径と表記するので忘れないように。 | |
なんだかややこしいです…。 | |
砲身には溝が刻んであるライフル砲、溝がない滑腔砲の2種存在する。 | |
ライフルは砲弾を回転させてジャイロ効果によって弾丸を安定させる為のものですね。 | |
砲の薬室に砲弾を入れた後は閉鎖機で蓋をする。この閉鎖機には大別して2種存在する。
これは使用する砲弾の方式によって変わるので簡単だろう。砲弾には砲弾を加速する装薬と砲弾がセットになった薬莢式、別になった薬嚢式がある。 |
薬莢式は金属のケースに装薬を入れ砲弾と一体化した形式。薬嚢式は袋に入った装薬と砲弾を別々にしてある。 | |
薬莢式だと一回の動作で砲弾を装填できます。衝撃にも強そうです。それに薬莢自体が底の蓋にもなります。
薬嚢式のは不要な気がします。 | |
それは人力装填できる場合だ。砲弾が重くなるとどうなる?一度に装填はできないだろう。人力装填での発射速度を求めるなら薬莢式だ。
それに薬莢は意外に衝撃に弱い。外殻は真鍮でできているが、これが高くつく。物資が欠乏すると鉄製の薬莢なんてのも出てくる事になるぞ。それにこんな事もある。 | |
…? | |
えい。 | |
!!! | |
こんな風に空薬莢が当たるとすごく痛いだろ。無理して設計段階で想定外の長砲身砲を搭載した戦車だとよく薬莢が戦車長の足を直撃したもんだ。
ほら、怒ったならかかってこい!! | |
う、う、う、うがー!! | |
足もとがお留守だぞ。 | |
!! | |
あーあ、なんてお約束な奴。 | |
うぼぁー!! | |
足もとに転がる薬莢は邪魔だろう。踏んで転んだりすると痛いだろな。
やっぱり体で覚えるのが一番わかりやすくていいな。どうだ、学習できたか? | |
こ、この人はサディストです。 | |
と、ところで真鍮製薬莢の代替品は鉄製といいましたが、どんな問題があるんですか? | |
鉄は錆びて劣化する。それに軟いから砲弾発射時の圧力に負けるんだ。
密閉した薬室の薬莢が圧力に負けて膨張すると、薬莢が薬室に詰まる。 すると次弾装填に手間取ることになる。鉄製薬莢を使う場合は専用にこの膨張率を計算した余裕を持った大きさの薬室を用いる必要があるな。 ドイツの場合はもともと真鍮製薬莢を想定していた砲に鉄製薬莢を使う羽目になったから悲惨だな。 | |
みんな貧乏が悪いんです…。 | |
さて、ドイツ海軍は戦艦の主砲弾まで薬莢式を採用していたから必ずしも大きい砲弾が薬嚢式とは限りらない。
だがまあ、基本的に薬莢は小口径向き、薬嚢は大口径向きであると覚えておけ。 | |
これらの砲弾を薬室にとどめておくのが閉鎖機だ。
薬嚢式 隔螺式閉鎖機(螺子式の栓) 薬莢式 水平鎖栓式閉鎖機(薬莢を栓で支える) | |
まずは水平鎖栓式閉鎖機について説明しよう。
こちらは薬莢が栓になるので、薬莢を支える事が出来ればいい。 |
板で薬莢を支えているのですね。構造が凄くシンプルです。 | |
確かにシンプルだが、砲弾発射後に薬莢が排出されるようにつくるのは意外に大変だ。
前回の講義で体験しただろうが、隙間ができるなんて事があるのは問題外だしな。 | |
まだ火傷が完治していません…。 | |
一方の隔螺式閉鎖機は砲尾を完全に封鎖する必要がある。そこで閉鎖機を螺子状にして閉鎖機を回転させて密封する。 |
原理的にはペットボトルのふたと同じですか? | |
同じだな。ただし蓋とは違って閉鎖機の方が口径が小さく内部に挿入して閉鎖する。
駐退復座機については説明済みだったな。あの図のように砲身の下に機構を組み込んである。次に必要になってくるのが砲を固定する砲架だ。車輪が付いてない場合は托架と呼ばれる。 砲を安定した形で地面にすえつけ、発射の時に支える。接した部分で必要な射角を砲に与える。 |
上の図はまあ一例と思ってくれ。砲によって細部は異なる。
図が雑だとかいう苦情は一切受けつないのでそのつもりでいろ。 | |
………。 | |
一個図を描くのにどれだけ時間がかかると思っているんだ?
砲の構造については以上だ。 | |
質問いいでしょうか? | |
許可する。 | |
タイヤが付いてない方があるといいましたが、そういった方はどうやって移動させるんですか? | |
タイヤのついた移動用の砲車が別にある。移動させてその後は砲車を外して設置。もちろん砲車に乗せたままでも射撃は可能だ。 | |
最後にこれらの砲で狙った場所を撃つための照準器について説明する。
見える相手を狙う直接照準の場合は光学式の照準器を使う。そこにはステレオ式などの種類の違いはあるが 原理的にはどれも暗殺者が使っているライフルについているスコープと変わらない。 | |
面倒なのが直接見えない場所を狙う間接照準の場合だ。
これは現在の砲の射角、基準からどれだけ左右にずれているかを知る必要がある。 | |
射角は砲にメモリをつければいいだけじゃないですか。 | |
想像力の欠如した奴は気楽でいいな。砲が常にまっ平らな場所で撃てる思っているのか?
まずは照準器のおかれた場所がどれだけ傾いているかを知る必要があるだろ。
これは気泡の入った水管(水準機)を使う。気砲が中心に来ればまっ平らの姿勢を取った事になるな。これを基準に射角の0値を調節する。 水準機は簡単なものならそこらのホームセンターにでも行けば売っているから、機会があれば探してみろ。 | |
?? | |
さらにそこから対物レンズで照準器の縦方向と横方向の基準を合わせる。
それでようやく基準を取ったら照準だ。ただ撃つといっても砲弾の種類によって弾道は異なるし、同じ砲弾でもロットによっては弾道が微妙に異なる。 まあそういった細かい計算は本部で計算してもらうから下っ端には関係ないか。このような面倒な手順を取ってようやく一発目(評定弾)を発射できるわけだ。 | |
一発撃つだけでこの手間ですか? | |
砲とは物理学の高度な計算によって成り立っている兵器だぞ。面倒な計算がいるのは当然だろうが。
一応砲の機構については以上だ。 | |
砲の物理的構造の説明が終わったので今度は私から爆薬の説明をさせてもらいます。
物理や化学の領域になりますが特に専門的な事はしないので気楽に聞いて下さい。 | |
ウっ、また難しそうな話…。 | |
まずはそもそも爆発とは何なのか?これを知らないと意味がないです。 | |
爆発は衝撃で物を壊す現象です。 | |
正確には爆発は気体の急激な膨張を指します。これを破壊に利用すると候補生が言ったような事になるわけです。
爆薬を使った場合だと、爆薬が燃焼して気体に変化して圧力を発生を破壊に利用していますね。 例えばニトロセルロース1グラムを爆発させると900ccの気体に変わります。 | |
たしかに爆風という言葉もあります。あれは膨張のせいだったんですか。 | |
爆発は今言ったとおり気体の膨張現象です。当然膨張そのものには速度があります。これは使用する爆薬によって異なります。
空気中で物を高速で移動させるとある一定の速度で物理現象が発生します。これはなんでしょうか? | |
音速を超えると衝撃波が発生します!! | |
その通り。当然これは爆発した際にも適用され、爆発速度によっては衝撃波が発生します。
この衝撃波の有無が爆発の性質を大きく違ったモノにしてしまうんです。 |
(音速未満) | 音速以下のゆっくりとした燃焼
ガス圧による押す力が発生するので、砲弾を加速するのに適している。 爆薬の感度高め |
(音速以上) |
音速以上の衝撃は発生させる爆発。
破片の作成に適して、殺傷能力が高い。 爆薬の感度低め |
これを見ると速度が速いのがいい爆薬というわけでないんですね。 | |
砲では砲弾を加速したり砲弾を爆発させたりと様々な形で爆薬を用います。
使われる火薬は用途によって特製の異なった性質をする事になります。爆薬自体の種類は無数にありますが、用途としては主に下記の4つの分類でしようですね。 |
砲弾を加速する爆薬。
燃焼速度は低めでガス発生量(圧力)が重要視される。 | |
任意の点で爆発を起こす為の爆薬。
感度が高く爆発しやすい。これを外圧から隔離、起爆時以外に炸薬と切り離しておく事によって事故を防止する。 エネルギーは低い。 | |
爆発によって破壊を起こす為の爆薬。
破片作成能力や衝撃波が発生させる為に爆発速度が高い。 高エネルギー。 | |
起爆薬の爆発を装薬が爆発できるエネルギーまで高めるための爆薬。
起爆薬と炸薬の中間的性能。 |
伝送薬?起爆薬があるのにどうしてこんな物が必要なんでしょう? | |
起爆薬は感度が高くて便利なのですが、ここから発生するエネルギーだけでは炸薬が爆発するには足りません。
そこで起爆薬のエネルギーでより大きなエネルギーを持った伝送薬を起爆、そこから炸薬を起爆させるんですよ。 | |
なるほど色々と組み合わせて使う事によって必要な性能を補っているんですか。 | |
さらに言うなら、必要な性能を発揮するには保存をしっかりとする必要がありますね。
きちんとした状態で保管しておかなしと既定の性能を発揮できません。 | |
やっぱり雨ざらしとかはダメなんでしょうか? | |
厳しい環境で戦う軍隊の砲弾が雨ざらしで使えないという事はありません。 例え雨ざらしでもショートスパンでみるなら正常に動作します。まあ数年くらいは持ちますね。 | |
それだったら戦争中に雨にさらされて使えないとかいう事態はなさそうです。 | |
一方でロングスパンで見ると色々と問題が起こります。
雨ざらしだと構造物が腐食したり、爆薬が湿気を帯びたりします。高温にさらすのもNG、爆薬が化学変化をおこします。 装薬は形状(棒とか粒とかいろいろな形がある)が重要なのですが、これが崩れる事もあります。 保存するには低温、低湿の安定した場所で。それでも何十年もたつと使用できない、最悪爆発。 | |
爆発!? | |
ニトロセルロースは保存状態によって分解されると熱が発生、これでドカン。
たまに弾薬庫が吹っ飛んでいるのもこれが原因。とはいってもここまでいくにはきちんと保管していれば数十年はかかるけど。 | |
じゃあ弾薬は定期的に消費しないといけないんじゃないですか? | |
だから砲弾にはきちんと使用期限があって、それに伴ったスケジュールが組まれています。
砲弾を消費する為に戦争を起こすとか言う人がいますが、黙っていても消費する物を戦争おこしてまで消費するなんて論外だわ。 むしろ戦費のせいで砲弾の保有枠が減ったりするのよね…まったく。基本的に戦争をすると軍隊は貧乏になるのよ。予算は有限なんだから。 | |
では最後に装薬と砲弾の加速について勉強してみましょうか。
炸薬については砲弾の講義をする時に詳しく説明させてもらうので、今回はなし。 | |
砲身内で、装薬のガス圧を用いて加速するんですよね。
砲弾の速度が大きいほど射程が大きくなって便利な砲になります。 | |
では砲弾の初速(砲口を出た時の速度)を高めるにはどうすればいいか、答えてください。 | |
長砲身砲を使えばいいです!!
虎も豹も砲身が長いからすごいんです!! | |
はずれ!!それじゃあせいぜい30点。単位はあげらない。 | |
えぇ、で、でも凄い砲はどれも砲身が長いです!!
それに実際砲身を長くしたら砲弾初速が上がっているじゃないですか。 |
口径長 | 初速(m/s) |
24 | 385 |
43 | 740 |
48 | 790 |
70 | 925 |
たしかに長い方が高初速を実現しているわ。じゃあこの理由はどうしてだと思うの。
まずは自分の考えを述べてみなさい。 | |
長い砲身だと加速に使える距離が長くなります。
走り幅跳びや高跳びの助走距離みたいなものです。短いと実力を出し切れません。 | |
なるほど、助走距離ね。じゃあ走り幅跳びの助走距離を通常の2倍にすれば凄い世界記録を達成できたりするの? | |
そ、それは無理ですよ。身体性能には限界があるんですから、助走距離が長くても出せる距離には限界があります。 | |
では何故同じ事が砲でもおきると考えないのよ。 | |
!? | |
砲弾が砲身の中を移動すると摩擦がかかって抵抗力が発生する。溝に食い込ませて砲弾を回転させるライフル砲ならなおさら。
この摩擦は砲弾を加速する上では邪魔以外の何物でもない。砲身が長すぎるとガス圧が力を使いきった後は摩擦で速度が落ちる。
ただ砲身を長くするだけじゃ初速はあがるどころか下がる。最悪砲身内で止まる。 | |
それじゃあ装薬を増やせば解決します! | |
装薬を増やす?どうやって?ただ多くしても爆発した瞬間だけ圧力が高かったら、やはり砲身内で限界がくるでしょう。
少しは頭を使いなさい。発言の前に分析をしないと奴は馬鹿と呼ばれるだけでしょうが! | |
で、でも戦車の砲が長いのは確かです。長いほど初速が高いです。 | |
砲身がない事は条件の一つにすぎない。重要なのは砲身の長さを生かしきるように装薬のガス圧を調節することが必要となってくるんです。 | |
りょ、量意外に調節する事があるんですか? | |
今言ったように装薬を増やしても最初の圧力だけ高いなら長砲身はほとんど意味がない。長砲身を使うためには圧力を長時間持続させる必要、つまり燃焼時間を調節する事が重要になってくる。 | |
それは、同じエネルギーでも1秒間で使うか、10秒間で使うかで砲弾の速度が異なるってことでしょうか? | |
その認識で間違いがないです。下のグラフを見てください。
燃焼時間と圧力の関係を3パターンで表してみました。 |
どの燃焼方法もエネルギー総量は同じとしたら、長砲身砲に適しているのは何番でしょう。 | |
3番です。3番が一番長い時間圧力を発生させています。 | |
正解。逆に1番は短砲身砲で撃つときに適していますね。このように同じエネルギーでも使い方によって砲の性質が異なっています。
もちろん、エネルギーの総量が同じだと限界がありますから、長砲身では装薬が多く必要になるのは間違いではありません。 基本的に加速の時間が長い砲が速度を上げられるので、加速したいなら長砲身は必至です。短砲身では同じエネルギーを使っても長砲身には勝てないです。 |
仮に砲身が短いと、上の図のようにエネルギーが有効に使えません。赤い部分のエネルギーは完全に無駄になっていますね。 |
逆に砲身が長すぎると燃焼が終わっても摩擦が発生し続けます。
上のように赤い部分を通り抜ける間ずっと摩擦が発生して砲弾の速度が落ちています。。 | |
燃焼時間の調節はどうやってするんですか?装薬の種類を変えるんでしょうか? | |
……お腹すいたわね。 | |
……はい? | |
姉さんはどう? | |
ん、まあそれなり。 | |
それならちょうどいい。じゃあ食堂に行くわよ! | |
え、え、え、え!?講義は!? | |
さて、食堂と言ってもこの時間じゃ何も出てこない。そこにラーメンの材料があるからあなたが作りなさい。 ただし、できるだけ早く!! | |
ど、どうしてザフ子がこんなめに…。インスタントラーメンなんて人間の食べるものじゃありませんよ。 | |
そっちが不満なのかよ…。 | |
できましたよ!!さっさと食べて講義を再開しましょうよ!!うがが!! | |
よくできてるじゃないの。ところでどうして野菜は細かく刻んで麺は細麺をチョイスしたのよ。 | |
その方が早くできるからですよ!!火の通りが速いんです!! | |
装薬もそれと同じ。内容量あたりの表面積が大きい方が燃焼速度が速くなるのよ。
うん、美味しい。 | |
…そ、それだけの為にラーメンを。 | |
腹が減ったのは事実だけどね。材料代も経費で落としたし。 | |
………。 | |
さて、そういうわけで燃焼速度調節に必要なの種類でなく形状。爆薬というと粉を思い浮かべる人が多いと思いますが、実際には他にしたのような形状があります。 |
装薬の表面積が大きいほど燃焼速度が速く、逆だと遅くなる。また、同じ形状でも薬莢内の密度が高いと早く燃える。
また、同じ形状でも穴をあけると表面積が大きくなって燃焼速度を調節できる。 |
・装薬の形状
・装薬の密度 これと、薬莢の形状が燃焼の性質を決定する。高性能の砲を完成させるにはこれらの条件をクリアできるだけの化学が必要。 砲の開発は一朝一夕にはいかないわけです。 | |
そ、それで砲弾を加速するにはどのような形状が一番いいんでしょうか。
長砲身砲だと燃焼時間が長い、つまり表面積が小さくてあまり密度がない方が適していると分析できます。 | |
砲弾を加速するのに適したのは棒状。これを束ねて薬莢に装填、後部に伝送薬として黒色火薬を用いている。
大ざっぱに表現すると以下のような感じね。 |
このような方法で長砲身砲を用いて砲弾を加速すると以下のような感じで砲弾が加速されます。 |
このグラフからさらに砲にとってもう一つの必要な性能を割り出せるのですが、それはなんでしょうか。 | |
……砲の重さでしょうか。圧力が分るなら反動もわかります。 | |
それもありますが、それよりも重要なのが砲身の厚みです。砲身の厚みはかかる圧力に耐えられるだけ必要です。 | |
たしかに最大圧力がわかれば砲身の厚みを決定できますね。 | |
最大値からでは砲身の厚みは決められません。正確には場所ごとの厚みです。
さんざん説明しましたが、砲身にかかる圧力は一定じゃないんですよ。砲身に圧力がかかるのは砲弾よりも後ろの部分です。砲弾より前の部分にはガスがないから圧力がかかりません。 それを踏まえて先ほどのグラフに一つ値を足してみると。 |
こ、これは…。最初だけ大きい値になります。 | |
装薬の燃焼が終わりに近づく後半は圧力が小さくなって砲身の厚みが薄くて済みます。
逆に根元は厚い。この値を使えば無駄な厚みを取り去って軽い砲を作る事ができるわけです。 | |
た、たしかに虎も豹も砲は根元ほど大きかったような。 | |
高性能な砲を作るというのは、こういった事を実現できる科学力や分析能力、工業力が必要になります。
決してただ大きくすれば強いと言った単純な兵器ではないのです。 | |
ところで…もし装薬の代わりに炸薬を使ったらどうなるんでしょう。 やっぱり砲弾は飛ばないんでしょうか? | |
…そんな面白そうなことやらないわけにはいかないじゃない。
講義だから実験は何やっても合法だし。 | |
マッド魂に油を注ぎやがった。 | |
それではさっそく装薬にTNTを使ってみるか。TNTは湯煎すれば簡単に液体に変わるから扱いがやりやすい。 砲弾を湯煎して炸薬を液化して薬莢に装填。起爆は信管の部品を流用して…。 | |
どうしてこういう人たちは作業をする時に独り言が多くなるんでしょう…。 | |
聞いてやるな。本人も理由はわかってないだろうよ。 | |
起爆は遠隔操作で、私たちはそこの演習用塹壕に避難するわよ。ほら、移動しなさい!
早く! 早く! 早く! 早く! 早く! | |
……も、もしかしてザフ子はかなりヤバい事を言ったんでしょうか? | |
ボヤボヤするな!速く非難するぞ。そこにあるヘルメットを被っておけ! | |
塹壕じゃなくて家に行きたいです。 | |
避難完了?では………ポチっとな。 | |
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ぬわーっ!! | |
さて、どうなっているか。 | |
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…ほ、砲がバラバラに吹っ飛んでます。ついでに演習所も傷だらけです。 | |
まあ装薬にTNTを使えばこうなって当然でしょうね。砲弾の炸薬にも融爆したからなお破壊が大きくなったみたい。
砲身や薬室がTNTの爆圧に耐えられなくなってバラバラになると。いい実験だったわ。 | |
ざ、ザフ子の不用意な発言のせいでこんな事になるなんて。 | |
というわけで、爆薬は用途に合わせて選別。砲自体も必要な強度を持っていないと大変な事になります。
コンピュータのない時代にこういった事を計算しながら砲を開発するのは大変なことだったんです。新型砲は長い実験とデータの蓄積の結晶、一朝一夕で出来ることではないのです。 | |
その為に砲が一つ犠牲になりましたよ。 | |
(少し外していたらこの有様。この後始末を私がするのか…) |