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まあ全部答えられるかとは限らないけどね。
まあその辺は察して。
戦車の基本構造物
アハトゥンク!
それでは最初の講義は戦車の基本的な構造から勉強していこう。
やぼーる!!
残念ながら講義に適した戦車のイラストがないので今回は手持ちの模型を使用する。
以下の写真は手元にあった4号戦車F2型のモノだ。即売会に来てくれた人なら見た覚えがあるだろう。
ばうあー中尉も一緒の奴ですね。みっくみく♪
彼女の持っているパンツァーファウストに関しては、歩兵の対戦車兵器の講義でやるので今回は割愛する。
では戦車をそれぞれの角度からも観察してみるぞ。



こう見ると戦車は色々な物が付属しています。
特にハッチなんかは被弾した時に大丈夫なんでしょうか?
いい発言だ。戦車は見ての通り様々な構造物から成り立っている。
これら一つ一つに不要なものはない。それらが被弾すると破壊される。
戦車は、いや、兵器は弱点だらけであり決して無敵のモノなどないのだ。過信すると死につながる。
仮に無敵の装甲を持った兵器があっても撃破不可能になる事は決してない。
それでは戦車の主要な部分を説明していこう
戦車の砲塔部分のアップですね。ところで砲塔は何のためにあるんでしょうか?
砲塔ターレットの利点は視界と射界の確保にある。
360度回転する砲塔ならどこにいる敵にも攻撃をする事が可能。
砲塔がないと攻撃をする為に砲を車体ごと動かす必要がでてくる。これは汎用性に欠けるしトランスミッションへの負担が大きく故障が増える。
円状の物が車体に乗っているので視界を確保しやすい。砲塔が無いと視界を得るために移動するか頭をだす必要がでてくる。迅速な視界確保ができないと対処も遅れる。
車体影響されないに可動部分を持つ事によって移動と攻撃を独立させられたんですね。
もちろん砲塔にもデメリットが存在するのだが、それはまた今度・突撃砲・駆逐戦車の講義で説明していこう。
では砲塔各部の説明だ。
1・コマンダーキューポラ
2・ベンチレーター
3・クラッペ
4・主砲同軸機銃
5・防盾
知らない単語がたくさんあります…。
キューポラ?クラッペ?
知らないから講義を受けているんだろう。
コマンダーキューポラは戦車長用の司令塔ともいえる場所だ。キューポラとだけ言う時はだいたいコレをさすな。戦車長はこれについている視察口から外部の様子を確認して行動を決定する。
でもそれなら外に顔をだせばいいじゃないですか?
戦車は砲煙弾雨の中で行動するんだぞ。頭をむき出しのままだと危険が大きいだろう。
しかし戦車最上部にあり、視察口のついたキューポラの中なら比較的安全に外の様子を知る事が可能だ。
いわば観察専用の小型砲塔だ。
……でも攻撃を食らったら簡単に壊れそうです。
キューポラの利点はそこに人がいる事が外からわからない事だ。そうそう攻撃されない。砲弾の破片を防げる程度でも十分安全。 だが知られたらそこに榴弾を撃ち込まれたりする事例もある。初期型ティーゲルはキューポラに欠点があったからそういった事例もあった。 それに基本的な事として外を見る場所は弱点だ。完全な防御は不可能。実際このような視察口はAT(対戦車)ライフルの絶好の射撃ポイントになっている。
戦車兵は大変です…。
この程度でビビるな。実際にはキューポラから頭を出して行動する事が多かった。
どれだけ便利でも視察口から得られる視界はせまい。確実に外の様子を知るためには直接見るのが一番いい。
じゃあ何のためにキューポラがあるんですか?
現場では 視界を得られない危険>>外に体を出す危険 とされていたんだ。
外に頭を出す事によって死傷する戦車長がいるかもしれない。
だが視界が得られないで破壊される戦車の数は少なくなり、結果として全体の被害は小さくなる。
キューポラは状況によって使用したりしなかったりするわけだ。
あう……戦場では覚悟が必要なんですね。
ベンチレーターは我々が日常的に目にするものと機能は一緒だ。
戦車の砲弾装薬から発生するガスを外へ排出する。
戦闘時には必ずこれのスイッチを入れておかないといけない。でないとガスが危険地に達して乗員が危険になる。
次に車体の視察口がクラッペだ。
でもこれ穴が開いていません。どうみても鉄板です。
クラッペは言わば蓋を閉じられる視察口だ。必要な時だけ装甲板をどかして外を見る。
先ほども言ったが外を見る場所は弱点となる。防弾ガラスはあるが、耐えられるのはせいぜい砲弾の破片だ。
ATライフルだと貫かれる。装甲板があるに越した事はない。
ですが、大きな車体からすれば視察口なんて点ですよ。
ATライフルは非常に射撃制精度が高い。ある程度接近できれば十分弱点を狙撃できる。
実際対戦車ライフル対策に専用の装備を必要としたんだから戦車にとっては大きな脅威だったと言える。
特に東部戦線では対戦車ライフルでかなりの数の戦車が狙撃されている。
それならいっその事視察口を減らした方がいいような気がします!
キューポラと操縦手関係以外は廃止です!!
実戦を通してその方向に進んでいったからそれも方法の一つだ。
ともかく視界の確保と防御は反するという事は覚えておくといい。
次は主砲同軸機銃。
主砲と同じ方向を向いた機関銃だ。射撃は砲手が担当するので主砲と同時には使用できない。
歩兵を相手にする時には必須の装備だ。
最後に防盾、これは主砲についた装甲だ。
砲は稼働するからどうしてそこに隙間ができる。そこで砲の上に装甲をつける事によってそこを守っている。
ただし防盾は形状によっては大変な事になる事もある。それはまた別の機会に説明させてもらおう。
1・ハッチ
2・車体前方機銃
3・操縦手視察口
4・点検ハッチ(予備履帯)
戦車の前面にハッチがあるなんて初めて知りました。
このハッチから操縦手と無線主(兼・前方機銃主)が出入りする。
また危険のない地帯ではここから視界を得て操縦もできる。
そして危険がある時は視察口から操縦するんですね。
そうなる。戦車によっては視察口の代わりに潜水艦についているようなペリスコープを装備している車種もある。
これだと被弾により強くなるが、視界の面では微妙だな。
それにしてもこんなに視界が狭くて本当に戦車を動かせるんでしょうか?
最悪穴にはまってしまいそうですよ。
だからこそ戦車長の指示が戦車にとって重要になってくる。
各クルーの連携・戦車長の判断が戦車の命運を分けると言っても過言ではないだろう。
予備の履帯は防弾の効果も兼ねて車体の各部に取り付けられている。
点検ハッチは最終減速機の点検をする際に開ける。その横にある出っ張りは冷気取り入れ口とブレーキ点検ハッチだ。
その上の予備の履帯は防弾の効果も兼ねて車体の各部に取り付けられている。
クルーの判断によっては土嚢を積み上げている例もあるが、これは重量増加で足まわりの故障が増えるのであまりお勧めできない。 原則的に現場での車体改造は禁止事項だ。それは勝手な改造によって車体への負担が増す、補給の問題が増えるなどのデメリットがあるからだ。
1・雑用品箱
2・エンジン冷却排気口
3・側面ハッチ
戦車に外付けで雑用品を入れる箱?
わけがわからないです。
まあこの雑用具入れは4号戦車で後から追加された装備だ。別に全ての戦車にあるわけじゃない。
戦車は想像以上に中が狭い。余計な物を載せておく余裕はない。後からとはいえ物入れができたのは大きいぞ。
何しろヘルメットを置いておくスペースがなく、外にかけておいて紛失するケースがあったくらいだ。
当然ヘルメットがなかったせいで死傷した戦車兵もいた事だろう。
やっぱり戦車兵は大変な仕事です…。
排気口はエンジンの冷却気を排出する。写真ではわからないが別の場所に吸気口もある。
この下部にエンジンルームがあるわけだ。4号戦車はガソリンエンジンで動いているが、同時期でディーゼルを採用している戦車もある。
ここに火炎瓶を投げ込んでやれば戦車は撃破できる。
もっとも、マトモにやったら兵の命がどれだけあっても足りない困難な任務になるだろう。
側面のハッチは人数分の出入り口を確保するためには必須だな。
ここに弾が当たったら一大事です!!絶対にこんな戦車には乗りたくないです。
ハッチは廃止です!!
……そうか。ではハッチを減らそう。かわりに脱出の際には貴様は最後だ。
人数分より少ないから誰かが後からでないといけない。
あぅ。そ、それでもマシです。側面にハッチはいりません!
側面を取られた時点で不利は確定している。安心して死んでくるがいい。
でも安全性は少しでも高い方がいいです!!
まあ実際問題として側面ハッチが危険なのは困る。
後期ではハッチの位置が後方になったりしているな。
それ以前の問題として戦車に乗りたいくないんです!!!
どう考えても危険が大きすぎますよ!!
当然だ。戦車は攻撃の際に最優先目標になる。
どれだけ装甲で守られていようとも危険は他の兵器よりもずっと大きい。
熟練した歩兵は戦車がある事を望むが、自分が載りたいとは言いださない。戦車の危険を肌で知っているんだろう。
それだけ戦車兵は肝の据わった連中が乗る、まさにエリートだ。
歩くのが嫌だとか装甲で守られたいなんて軟派な奴は最初からお断りだ!
そ、それでも、守りたモノがあるんです。
戦車のウリともいえる履帯だ。履板を繋ぎ合せて車輪で回転させ車体を動かす。
1・起動輪
2・誘導輪
3・支持輪
4・転輪
履帯?キャタピラじゃないんですか?
キャタピラはキャタピラー社の商標登録だ。
機構自体の呼び名は履帯。これをキャタピラと呼ぶのはガトリング砲をすべてバルカン砲と呼ぶようなモノだ。
??
(もうキャタピラで理解してればいいか)
……履帯の特徴はタイヤに比べて不整地の踏破能力が高い点にある。
砲弾の穴や塹壕だらけの戦場ではこれがないとまともに動く事もできない。
ただし地面を引っ掻きながら移動しているようなモノなのでエネルギー効率は最悪。最大速度と燃費は望むべくもない。
起動輪が動力を受け取って回転、履帯を回転させる。接地している転輪を伝って調節の役目を持った誘導輪を介して戻っていく。
転輪は戦車の重量を受けとめるのでサスペンションを装備している。4号戦車の場合はリーフスプリングサスペンションだ。
この転輪のサイズや配置で戦車の起動面での特性が決定するので戦車によってさまざまな種類が存在している。
この4号戦車は安定性を重視した構造だな。まあこれは別の機会に詳しく説明しよう。
むき出しですからやっぱり被弾に弱そうです。
確かに被弾に弱いのは事実だが、側面自体が弱いので致命傷ではない。戦車相手なら履帯は弱点ではない。
履帯を含む側面自体が弱点だ。
それなら正面からキャタピラを撃ってはどうですか。これなら弱い戦車でも強い戦車を行動不能にできます!!
戦車を正面から見てみろ。履帯の占める範囲はどれだけある?
これを狙い撃ちするのは至難の業だ。まあ弱点である事は認めるが。
正面の履帯を狙って撃てるようならドイツ軍はT−34相手に苦戦したりはしない。
戦車以外で戦車を攻撃するときには狙い目だ。履帯部分の側面ももきちんと装甲板があるので機関砲程度には耐えられる。
だが肉薄されて爆薬を仕掛けるなど破壊の方法はあるだろう。肉薄できるかは別問題であるが。 マトモな対戦車兵器があるのなら歩兵でも側面を取れば撃破できる。履帯を狙うのは手元に資材がない場合の苦肉の策だ。 実際問題、履帯で一番怖いのは故障だ。
………故障?
何十トンもある戦車を作業機械以上の高速で走らせているんだ。当然故障も多い。
履板が外れる、接続が途切れる、転輪が外れるなど問題は多い。
パンテルは転輪のゴムがすぐに外れた。
オットー・カリウスはハーフトラックの履帯が外れるのを嫌ってバイクで偵察、その結果負傷している。
故障で死ぬなんて嫌すぎます…。
その為に定期的なメンテナンスが必要になってくるわけだ。メンテ無しだと一週間ももたない。
戦車の基本的な構造は以上だ。何か追加で知りたい部分があったら言うように。可能な範囲で追加していく。
次回からは各部の細かい解説をしていこう。
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