第四話

天野が来たりて銃を撃つ

 

前回までのあらすじ

CV・永井一郎

パートナー名雪とはぐれ絶望にくれる祐一

しかしそんな彼のもとに新たなる輝き

第一種臨界不測兵器重力子放射線射出装置を持つ無口少女

天野実汐

旅を続ける二人

そんな中、戦闘の過程で栞が暴走

拘束具が外され制御不能の事態に陥る

そして追跡者を手懐ける事に成功する名雪

しかし優勢は長くは続かなかった

量産型タイラント×9が空から投入される

そして北川は幼稚園バスに仕掛けられた爆弾を解除に失敗して重傷をおう

さらに治療中に謎の組織に襲われ、暗殺されてしまう

悲しみにくれる祐一

北川潤を殺したのは貴様だな!!

祐一の旅は続く

なんて事は一切無い

祐一は旅の過程でスナイパー天野に命を救われる

そして悪友北川との再会

嫌がる祐一

ようやくの事で森を抜けた二人が見たもの

それは自衛隊に包囲された街だった

脱出はできない

さらに復讐に燃える名雪の手によって北川が死亡

悲しみにくれない祐一

そして美坂姉妹と再会、そして別離

祐一は唯一脱出方法を知っているだろう人

倉田佐祐理を探し旅を続ける

祐一の冒険は終わらない

現在の装備・状況

祐一
マテバM2006M・弾薬×35
グロック21・弾薬×38
デザートイーグル・弾薬×40
名雪
LOST・所在不明。ハンターγと共に行動中
佐祐理
LOST・所在不明
LOST・所在不明
真琴
商店街にて追跡者の足によって死亡
天野
祐一の近辺に潜伏中
北川
森にてハンターγの胃に収まる
香里
栞を探索中
混乱中。現在逃亡
あゆ
商店街にて狙撃者に撃たれ死亡

さて…どうしたものか?佐祐理さんを探すにしても手掛かりがまったく無い。

携帯も使えない。妨害電波が出ているのか、ただ単に電波系が死んでいるかまではわからないが。

うーん…とりあえずナマモノを狩ってるんだから、それが多い場所に行けばそのうち見つかるかな。

ここからだと、噴水のある公園が近いな。とりあえずそこに行ってみるか。

とりあえずマテバに弾丸を込める。念のために使いにくいグロック21にも弾丸を装填する。

行くぞ。

公園にはナマモノが沢山いた。ゾンビ、犬、猫、クモ、狩人。俺を見た瞬間、殺意剥き出しで牙をむいてくる。

片っ端からマテバを撃ちこむ。あっという間に周りはナマモノの死体で埋め尽くされる。

そうやって中央へ向かって行くと、俺と同じようにナマモノ狩りをしている人が噴水の側にいた。あれは…栞。

ど、鈍器で応戦しとる!!!イボつき鉄球(モーニグスター)を振り回してる!!ガンダムハンマー!!

る、るくるく!?ちっちゃな悪魔?萌え萌えだよ!

た、確かに銃を乱射するよりはキャラが合ってるとは思うが…。

…駄目だ。グロイ!グロイんだよ!女の子がやっていい事ではない!

こういう事は学生剣士舞にやってもらわないと。

「まてーい!!」(CV・若本規夫)

ここでカッコよく助ければ、間違いなく俺の評価は急上昇。絶対に失敗は出来ない。

ナマモノの数は3。マテバを乱射しながら突撃する。1匹、2匹、弾丸に倒れる。残弾は1。

もう外せない。ナマモノにタックルをして銃口を体に密着させる。

「悪く思わないでね」

パンッ!

「無事か?」「さあ、行くわよ…初号機へ」

「別に助けてくれなんて言ってませんよ」

「そ、そんな。まだ怒ってるのかよ」

「別に…怒ってなんかいませんよ。事実を述べたまでです」

「…誤解だよ」

ど、どうすればいいんだ。完全に怒ってる。俺はどうすれば良いんだ?

の、脳内思考でシミュレート。

 

[普通祐一]普通に謝る。あくまで日常。

[弱気祐一]謝る。ひたすら謝る。捨てられたら生きていけない事を強調。

「軟派祐一」物で釣る。アイスを大量進呈。腹を壊したところで介抱。

[電波祐一]ゞ≦°〓∨≫仝″ナマステ

[残虐祐一]黙って連れて行く。途中で適当な人間を確保。目の前で拷問をして恐怖で屈服させる。

[猟奇祐一]マテバを一発。剥製にして永久に手元に。愛も永遠。

[鬼畜祐一]問答無用で襲い掛かる。既成事実で脅迫。写真を忘れずに。

[犯罪祐一]ボディーブロ一発。気絶したところを拘束。部屋に連れ込んで調教。

[自虐祐一]俺が全部悪いんだ。やっぱり俺は要らない人間なんだ。死んでお詫びを。

[嫉妬祐一]だから壊すの、憎いから。

[野獣祐一]オレサマ、オマエ、マルカジリ。

[横暴祐一]乗るなら乗れ(ベルトを外しながら)でなければ帰れ!!

 

何だこの案件は?俺って分裂症ぎみか!?しかもヤバイのが多いって!!俺は○作の主人公じゃないぞ!

どうしよう…って!栞がイボつき鉄球を振りかざしてる!む、無意識のうちに声に出してしまったか!?

「ま、待て!まだ選択肢選んだわけじゃ!」

そんな…俺は犯罪祐一の提案を採用しようかな…と思っただけで選んだわけじゃ…。

鈍い音。肉がえぐれ骨が砕ける音。………………生きてる。

後ろで何かが倒れる音。そこにいたナマモノ。助けてくれたのか…。

「祐一さん…ここは危ないですから離れましょう」

「あ…ああ」

「とりあえずここからだと私の家が近いですからそこへ行きましょうか」

「はい」

イニシアチブは栞の手に有った。俺にはただ頷く事しか許されなかった。

家は確かに近かった。歩いて5分ほどで目的の場所に足を踏み入れる事が出来た。

中には誰もいなかった。香里は別に行動している事はわかっているが、他の家族はどうしたのだろう?

聞いてみるか?……辞めておこう。今は…まだ。

通されたのは栞の部屋だった。

「俺が悪かったよ」

「本当にそう思っているんですか?」

「あの時は…俺も慌てていたから。だから…」

「わかりました」

「え?」

「わかっています。」

「あだぁーーー!!」

後ろからに大きな衝撃?バランスを崩して、俺はおもいっきり栞をベッドに押し倒してしまう。

ん…床の上に何か落ちてる。…非致死弾?……まさか……天野。

あの野郎!ゴルゴ13か!?黒いサザンクロスか!?狙撃が正確すぎるぞ!

「祐一さん……こんな時に…」

怪我の功名。うわっ!凄いいい雰囲気。もういつでも了承?

だ、抱きたい!でもやったら殺られる。天野に。う…撃たれる!

火遊びで火傷するのは構わない。…でも焼死してしまう。大火事です。火は安全に使ってね。

「だぁーー!」

我慢できるか!!俺は男の子だ!若いんだよ!盛んなんだよ!力余ってるんだよ!

栞はかわいいんだよ!貧乳なんだよ!(大小どっちも大好き!!)萌えなんだよ!

力いっぱい抱きしめる。鼻をいい匂いがくすぐる。

「好きだ」

そして服に手を…。

風…心地悪い風。頬に傷。出血。はじける地面の雪と土。

じ、実弾ですか?け、警告ですか。次は当てますか?

しかも即死させてはもらえなさそう。足、手、致命傷を避けて銃弾を打ち込まれる俺の姿。(栞は即死に)

それで動けなくなった所で介抱に来るとか。恩を売りつけられる。

手が栞を離す。そして距離を離す足。逸らされた瞳。

瞳を元の位置に戻した。最初に視界に入ったのは…泣きそうな栞だった。

「裏切りましたね!!私の気持ちを裏切りましたね!お姉ちゃんと一緒で裏切った!!」

「ま、待ってくれ!これは!誤解だ!」

足に痛み!意に介さない!

「がっ………」

衝撃。意識が混濁する。頭に非致死弾を撃ち込まれたな…。

どれだけ時間がたったのだろう。ようやく意識がはっきりした時には栞は消えていた。

……涙。頬を伝う。そして床が濡れた。悲しい。

ちくしょー!このままじゃ誰とも仲良くなれん。

佐祐理さんと一緒に弁当を食う事

舞と夜の校舎で密会

栞と商店街でデート

夢のまた夢。どれにしても末路は凶弾に倒れる俺。

死体に美女の涙を大量に受けるのは嫌じゃないが、生きている間に好き放題してからが条件だ!!

俺は自由に恋愛がしたいんだ!!世界中の美女に等しく愛を注ぎたいんだ!!

今までだって等しく愛を注いでいたんだぞ。それなのに!!

なんで邪魔が入るんだよ!!ストーカー反対!!女性が一人で歩ける街づくり。

あんなフレイ級のクレイジーな女に!ラクスでお願いします!

ふ…ふ……ふ…。は…は…は…は…はは…。

そうだよ…邪魔が入るなら排除すればいいんだよ。

自衛隊が包囲しているこの町は治外法権と言ってもいいだろう。それにこんな状況では人が死んでも誰も気にしない。

いや…殺さなくて利き腕にちょっと一生物の傷をつけるだけでもOKだ。

何も、問題は、無い。天野を…排除。障害多ければ多いほど燃える!やらなきゃやられる!

手持ちの火器を確認。駄目だ…スナイパーとの戦闘はとても無理だ…。

スナイパーライフルが必要だ。それも高精度の奴を。もしくはおおよその見当をつけてのグレネーダーの乱射。

くそっ!!これがメタルギアカノンなら通信で場所を知る事が出来ただろうに!

じっと通信機を見る。…一応やってみるか。

「こちらスネーク。オタコン、聞こえるか」

「誰がオタコンよ…」

「スナイパーライフルを探している。心当たりはないか?」

「相沢君」

「あるか?」

「寝言は寝てから言いなさい。寝てる間にナマモノに襲われなさい!」

…駄目か。どうしたものか。

そうだ…あそこならあるかもしれない。ある程度距離があるが仕方ない。

水瀬家に戻ろう。秋子さんの持ち物に全てを賭けよう。

待ってろよー。病弱少女、学生剣士、天然培養お嬢様。俺が必ずモノにしてやるぞ!!!

 

それからの俺は絶好調だった。

風のように雪に覆われた大地を駆け回った。

迫り来るナマモノは全てなぎ払った。誰も俺に傷を負わすことはできかった。

なすべき事を見つけたから、迷いが無いから強かった。

通常の数倍の能力を発揮できた。

……弾が切れるまでは。

弾が切れた俺は、アレをやるしかなかった。

石で撲殺。鈍器でダンス。飛び散る肉片血飛沫内容物。

 

撲殺冒険中

 

ようやく着いた…水瀬家。石でナマモノを1ダースは殴り殺したよ。ついでに同じ数だけ噛み付かれた…死ぬ。

家の中は出発したときと同じだった。ナマモノが徘徊していたりしていなくて良い。

まっさきに救急箱に手をつける。患部を洗い、消毒。そして最後に止血だ。………助かった。

さて家捜しだ。居間…台所…風呂…名雪ルーム…真琴ルーム。駄目だ、何もない。

物置……駄目だ。木刀くらいしかない。鈍器はもう嫌だ。

仕方ない。あとは秋子さんの部屋だ。

机の上…ん…なんだ…メモ?なになに。

ここにある物は好きに使ってください。本棚の奥に色々置いてあります。

秋子さん…俺達の行動を読んでいたって事か。つーかあの人が黒幕なんじゃ…。

しかし本棚の奥。動くのか…コレ。

「ぬおーー!!」

駄目だ…動かん。ん…なんだ…この本棚…一冊だけ背表紙の色が違う本が入ってるぞ。怪しい。

本を抜いてみる。と、その奥に不自然なボタンがある。押せって事か?

ぽちっとな。………こいつ動くぞ。いきなり本棚が機会音を立てて動き出した。

……なんで一般家屋の本棚の奥に隠し部屋が…あるの?この仕掛け!こ、ここはデビルサマナーの事務所か!?

あの人ならあり得る。ここのゾンビだって実は悪魔合体で作ったんじゃ…。

怖っ!と、とりあえず降りてみるか。階段を下りて地下室に足を踏み入れる。

降りてみるといくつかの扉があった。薬品室…実験室…ジャム部屋。あった…武器庫と書かれた部屋のドアノブに手をかける。

中に入ると何かの匂い。油とグリースの匂いだ。そして姿を出した、ずらりと並んだ銃器。

「…………これは」

三八式騎銃。 

十一年式軽機関銃。

三式対戦車手榴弾。

一〇〇式擲弾器。

99年式歩兵銃…。しかも、どれもかなり使い込んだ…。あの人、本当に年はいくつなんだ。

うおっ!14年式拳銃。(これらは旧日本陸軍の装備)

こっちはSIG・P220拳銃。

89式小銃!!

110mm個人携帯対戦車榴弾!!

84mm無反動砲カール・グスタフ!!(こっちは戦自…じゃなかった、陸自の装備)

あ、あの人は帝都物語の悪役か!!ありうるから嫌だ!!

と、とりあえずパンツァー・ファーストV(110mm個人携帯対戦車榴弾・わからない人はバズーカの親戚だと思え)を貰っておこう。でっかいナマモノに相手に役に立つ。

え?バイオならバズーカ(84mm無反動砲)だろって?俺はドイツ贔屓なんだよ!パンツァー・ファウスト万歳!

しかし…お、重!10K以上あるからな…。さらに装備が大量にあるのに。歩兵って大変な仕事だな…。

もし自衛隊に入るなら普通科じゃなくて絶対に機甲科だな。

いや!空軍だ!俺だったら雪風のパイロットになれる!(おい!それは空自じゃなくてFAFだろが!だいたい自慢にならん)

しかし、銃火器はあってもスナイパーライフルが無い。

あえて言うなら99年式歩兵銃。でもスコープ無しじゃな…。つーか弾が無い。古い銃だから仕方ない。

困ったな…。これでは天野に勝てない。俺は…あの人に…勝ちたい。

あと武器を持っていそうな人…佐祐理さんを探すしかないな。結局振り出しに戻るか。地道に佐祐理さんを探そう。

とりあえず、自衛のための武器として89式小銃を手に取る。弾丸は300発ほど鞄と服に詰め込む。

これならしばらくは戦えるだろう。

外に出ると、日が暮れて、空がオレンジ色に染まっていた。心地良い光景だが…そのどこかに狙撃者が潜んでいるかと思うと気が重い。

「誰だっ!?」

「こ、こんなところに居たんだね!」

あちゃー。厄介な奴に出会っちまった。名雪とナマモノだ。

「そう怒るなよ。俺が悪かったからさ」

「私騙されないよ!祐一は降伏した振りをして後ろから撃つような人だもん」

酷い言われよう…間違ってはいないが。

「あの時はなりふり構っちゃいられなかったからだよ」

「……………」

「ほら、お詫びにコレやるからさ」

背中に背負っていたパンツァー・ファストVを名雪に渡す。

「うわぁ、重い」

「これなら大きなナマモノストーカーだって問題ない」

「本当にいいの」

「当たり前だろ。俺はいつだって名雪の事を心配してたんだぞ」

我ながら…何を言ってるんだか。ついさっきまで存在自体忘れてたくせに。

「私…祐一のことを誤解してたよ。祐一にあんなに酷い事したのに」

「俺は物忘れが酷くてな」

(こいつら…北川の事は無かった事にして話を進めるつもりか)

「ストーカーが来たようだぞ。まったく…厄介なのに惚れられたもんだな」

「好きになる相手も、好かれる相手も選べないものだよ」

「心にぐさりと来る台詞だな。ほら、そろそろ撃てよ」

「目標をセンターに入れてスイッチ」

弾頭部が煙をあげて猛烈な勢いで追跡者向かって飛んでゆく。

弾頭の成形炸薬弾が追跡者を………襲わなかった。はるか後方で大きな爆発が起きる。

「うわっ、避けた」

「緊急回避だなー」

思い出した。追跡者は遠距離だとランチャーを回避できる事を。パンツァー・ファウストでも可能だったか。

「祐一、弾ちょうだい」

「ない」

基本的にこの手の武器は使い捨てだ。だいたい弾頭部だけで4キロ近くあるのに持ち歩けるわけがない。

「冗談………だよね」

「冗談じゃないよ」

もう駄目だな。とは言わなかった。

もう名雪に勝ち目は無いな。クリアまで逃げ回るしかないな。

「逃げたらどうだ。こっちに向かってきてるぞ。ゆっくりと…ゆっくりと…確実にな」

あともう少ししたらダッシュもするだろうな。そうなりゃお終いだ。

「ゆ、祐一も一緒にいてくれるよね。さっきそう言ったよね。見捨てないよね。もう私を一人にしないよね」

すがる様な目。……いい。俺が上に立った気がする。俺が主人だ!

「さっきも言ったけど…………俺は物忘れが酷くてな。何か言ったかな?」

「ゆ、祐一は女の敵だよ!」

いやー。どっちかと言うと男の敵ですよ。理由もなしにもてるし。女に不自由した事無いし。

しかも取り得はナッシング。いやーなんでもてるんだろ…ホント。(主人公だからだろ自主規制)

「逃げるよ、けろぴー」

あ、走り出した。速い速い。あ、ナマモノは走ると言うより飛び去るだな。

「逃げちゃ駄目だ。逃げちゃ駄目だ。逃げちゃ駄目だ。逃げちゃ駄目だ。逃げちゃ駄目だ」

「だったら祐一がストーカーを何とかしてよー」

「俺は…楽して美味しいところだけを食うのが好きなんだ」

「祐一は女の敵じゃないよ!に、人間のクズだよ!!」

言うだけ言って名雪は俺の視界から消えた。ま、死なない程度に頑張ってくれ。

それから俺はひたすら佐祐理さんたちを捜し歩いた。

89式はさすがに陸自の標準装備だけあって頼りになる。張られる弾幕はナマモノをまったく寄せ付けなかった。

ようやく商店街で狩りに興じる佐祐理さんたちを見つけられた時には辺りは真っ暗になっていた。

「探しましたよ。佐祐理さん、舞」

俺は二人に今までの出来事を話した。町が取り囲まれて脱出が出来ない事を。

「それで、佐祐理さんなら何かいい手段が有るんじゃないかと思って」

「任せてください。これを使えば大丈夫です」

手に何かを持たされる。これは…。

「信号弾……ですか」

「はい。これを学校の屋上で使えば、迎えが来る事になっているんです」

「ど、どうして学校の屋上で?」

「その方がバイオっぽくていいじゃないですか」

…納得するけど納得しない…。楽したいよ。

「そ、それじゃあ有りがたく使わせてもらいますね」

「佐祐理たちはもう少し頑張ってから帰りますから、祐一さんは先に帰ってくださいね」

とりあえず、俺のよみは確かだった。これで脱出が可能になったわけだ。

だが、俺にはもう一つやらなければならない事がある。

「あと…スナイパー・ライフルが欲しいんですけど」

「ちょうどよかった。佐祐理が持っているのをあげますよ」

「あの、できれば口径7.62mm以上でボルトアクションのライフルが欲しいんですけど」

ボルトアクションはいい。あのボルトを操作する姿がカッコいい!まさにスナイパーの名シーン!

「ボルトアクションですか…。佐祐理のPSG1は駄目ですね…セミ・オートマティックですから」

「いえ…あるなら喜んで受けとりますけど。PSG1なら命中精度は立派なものですし」

「大丈夫です!佐祐理に任せてください!ついて来てください。舞も行くよ」

それは歩いてすぐのところにあった。圧倒的な威圧感。マニアにはたまらない性能。

「ど、どうしたんか、コレは?」

「佐祐理の車ですよ。お父さまに買ってもらったんですよ」

…まさか…こんな場所で…ウニモグを目にする事になるとは…。

「舞、運転よろしくね」

「任せて」

舞は運転席に乗り込む。俺達は荷台の後部から乗り込む。入り口に備え付けられたM2重機関銃がこのウニモグの用途を表していた。

「あいつ…免許持ってるんだろうな?」

「祐一さん。渡すのはスナイパー・ライフルだけで良いんですか?」

「そうですね……あとマテバの補充弾丸と扱いやすい拳銃、それにPDW用短機関銃。それだけあれば助かります」

「わかりました。全部佐祐理が面倒見させてもらいます」

「いいんですか。そんなに沢山の物資を」

「友達は大切にしないといけませんから」

「体で払いますよ」

佐祐理さんを壁に追い詰める。あと少しで肌が触れ合うほどに距離が近づく。

「いいんですか、こんな事して。名雪さんに言っちゃいますよ」

「あいつは家族だから恋愛の対象外ですよ。それに、仮に恋愛対象だったとしても…俺は佐祐理さんの方がいい」

「あはははー、その口で同じ事を何人の女の子に言ったんですか?」

「佐祐理さんが初めてで、これから先に言うつもりはありません」

我ながらなんて都合のいい台詞だ。

……やるしかない。佐祐理さんの唇を……。

「だぁぁぁぁ!!」

「はえええぇぇ!」

突然の衝撃。派手に車内を転がりまわる俺達。

「だ、大丈夫ですか佐祐理さん?」

「少し…頭を打ちました」

急ブレーキをかけられたようだ。おかげでせっかくの美味しい展開が!!

「ついた」

何事も無かったかのよう顔を出してくる舞。

「ま、舞ッ!」

こ、この!せっかくいい所だったのに。

「祐一…銃口を人に向けるのはよくない」

「チッ!」

そこは町の外れだった。小さなほったて小屋。中に入るとそこには地下へ降りる階段。

長い階段を下りると、そこには地下とは思えないほどしっかりとした内装の部屋が現れた。

「こっちですよ」

そして一つの部屋に案内される。

中は物資の山だった。大量につまれたダンボール箱、立て掛けられた銃器、そしてなんらかの電子機器群。

目的の銃器を見てみる。スナイパー・ライフルは一箇所にまとめられていた。

こ、これはSIGモデルSHRタクティカル・スナイパーライフル!

す、凄い!アンティス・カウンター・プレシジョン・ライフル!!これなら消音スナイパー・ライフルだから場所がばれにくい。

ワルサーWA2000スナイパー・ライフル!重いが命中精度はトップクラスだ。

そんな名銃(?)の中から佐祐理さんは一つのライフルを手にとった。

「これがいいですよ」

「これですか」

M24スナイパー・ライフル。アメリカで信頼を置かれている銃。確かに無難な選択ではある。

「助かります。ありがたくお借りします」

「頑張ってください」

「スコープのクロスポイントは?」

「300mです」」

「なるほど」

さらに多くの装備を貰った。

マテバの補充弾丸×60。

弾が切れた拳銃の代わりとしてグロック36+弾丸60(マガジン10個分)。

さらに弾幕系の火器としてH&K・PDW+弾丸300。

これだけあればあと10年は戦えるだろう。

「ありがとうございます。それでは俺は行きますね」

「行くんですか?外はもう真っ暗ですから、今日は泊まっていってください。夜の外出は危険ですよ」

「そんな…迷惑じゃないですか?」

「構いませんよ。ね、舞」

「祐一、外は危ない」

「それじゃあ…御好意に甘えさせてもらいます」

「自分の家だと思ってくつろいでいてください。佐祐理は夕食の支度をしますから」

しばらく居間でくつろぐことにした。同じように暇そうな舞とチェスをする事に。

「舞は佐祐理さんを手伝わないのか?」

「私は…料理が得意じゃない」

「そいつは残念だ。舞の作ったものを食べてみたいと思ってたんだが」

「食べない方が良い」

「ま、いつかそっちの方から作りたいと言わせて見せるよ。チェックメイト」

俺の勝ち。同時に食事が出来たという声が部屋に響き渡る。

夕食は立派なものだった。魚をメインとして、スープやサラダなどが次々と出てきた。

うーん…秋子さんと良い勝負だな。

あっという間に料理を片付け、デザートのシャーベットをスプーンですくう。

「どうして佐祐理さんたちは、ナマモノ狩りをしているんですか」

「一匹につき10万円もらえるからですよ」

「いや…その雇い主は誰かと?」

「お父さまです。一人前の女になるには戦闘の一つや二つ経験しなければならないと」

「…素晴らしい…お父上で」

親って…偉大だな。子供の一生を決められる。良くも悪くも。俺がここにいるのだって両親の所為だし。

そしてデザートも全て胃に収まった。

「舞、お風呂入ろうか」

「入る」

「祐一さん。すいませんけど佐祐理たちの後で我慢してもらえますか?」

「我慢だなんて。それに居候の身ですから」

「それじゃあ、行こうか」

「…お風呂」

風呂。風呂…。風呂……。

佐祐理さんと舞が風呂に入っている。当然裸。

………………………………。(妄想中)

山は登るためにある。だったら…風呂は覗くためにあるんだ!!

いや…俺はギャルゲーの主人公。覗かない方が逆に罪悪。主人公失格といえよう!!

覗かなければ!覗かないと!覗き!!

チャララーチャラララーラーチャラーチャララチャーチャー(METAL GEAR SOLIDのテーマ)

今の俺は特殊部隊の隊員!今回の任務は佐祐理さん達の裸を拝む事。

最初の関門は、鍵の掛かった扉だった。まずはこれをどうにかしないと。

こんな事もあろうかと!!キーピックを用意しておいたのだ。バイオにおいてキーピックは基本中の基本!!

10秒…20秒…開いた。楽勝だ。音を立てながら扉が開く。

だてにソロモンの鍵を完全攻略していないぞ!(いや…関係ないだろが)

入った奥にはさらに扉があった。これを開ければ脱衣所だ!

先ほどと同じようにキーピックを差し込むが…………手強い。さすがと言うべきだろうか…備えは万全か。

開け!開け!開け!開け!開いてよ!今開かないと、今覗かないとみんなで風呂からちゃうんだ。もうそんなのは嫌なんだ!お願いだから、開いてよ!

………開いた。人間やれば出来るものだ。

ここが脱衣所か。ロッカーに鍵がかかってるよ。

そ、それよりも本体の方だ。さあ、こっそりと。………何……アレ?

………警備システム?メタルギアにでてきたアレ?見つかると撃たれる奴。

こ、殺す気か!(ダチョウ倶楽部風に)あかんわ…。こらあかんわ…。覗けへんわ。

って、ここまで来てあきらめらるか!とまらねーよ!!あたーっ!!

プス(何かが刺さる音)

当たっちまった。…………麻酔……弾?ガクッ。

 

「ようやくお目覚めですか」

「…………佐祐理……さん?」

体が動かない。…縛られてる。しかも…吊るされてる。

「佐祐理たちの裸を見ようなんて…大問題ですね」

「思いっきり良くない」

う……二人の視線が痛い。そんな汚いものを見るような目で見ないでくれ。

「いや…出気心という奴で…勘弁してください」

「許せませんね。舞、鞭貸して」

「はい」

………………………拷問ですか?

ビシッ!!バシッ!!

「あだ!!ひぐ!!ひっ!!」

さ、佐祐理さんの振りかざす鞭が俺の体に容赦なく襲い掛かる。い、痛いどころじゃない!死ぬ!!死んでしまう!

「舞、ロウソク」

「はい」

ポタッ…ポトッ……ドロ…。

「アツアツアツアツアツ!せ、せめてSM用の低温ロウソクで!!!」

「あははー。そんな事を知っているなんて祐一さんは悪い人ですね!ヤラシイ人ですね!!舞、乗馬鞭」

「はい」

そ、そんなマニアックな!!

「あうあうあうあう」

「ねえ、舞。なんか祐一さん喜んでるみたいだね」

「そう思う」

「うわっ!あそこが大きくなってるよ」

そ、そんな。俺はノーマルだ!見ないで!見ないで!

「楽しまれても嫌だし…切っちゃおうか」

「問題ない」

………………マジすか?

「そ、そ、そ、それだけは勘弁して。頼むから止めて。俺の魂を切らないで!」

「大丈夫ですよ。麻酔はしてあげますから。はい、麻酔終了です」

「佐祐理…ハサミ」

佐祐理さんの手にハサミが握られる。シザーマンが使っていそうなごっつい奴だ。そしてアレに冷たい感触。

「ありがとう舞。それじゃあ切りますよー」

「や、止めてーーーーーーーーーーーー!!!!」

ジョキン…ぽと……。

「あああああああああああああああああああああ!!!!」

 

「祐一さん」

「……………佐祐理さん?……………………ついてる」

………夢オチですか。

「怖い夢でも見たんですか?」

「いや…それは今までに味わった事の無い恐怖を」

そうか……煩悩を散らすためにスクワットをして…そのまま疲れて寝てたのか…。

裸を見れなかったのは残念だ。だが佐祐理さんと舞はパジャマ姿を見れた。これを見れただけでも幸せだろう。

「お風呂、空いたので祐一さんもどうぞ」

「ど、どうも」

「?佐祐理の顔に何かついてますか?」

「いえ…綺麗なもんですよ。それじゃあ一風呂浴びてきます」

「タオルは中に置いてありますから」

「はい」

風呂からでてから寝室に案内された。そこはベッドと簡単な机だけがある部屋だった。

ベッドを見たとたん、疲れがどっと出てきたようだ、そのまま転がり込む。

そういや、名雪の奴はあれからどうなったんだろう?まあ死んでいる事は無いにしても怪我くらいはしてるかもしれないな。

それに俺はこうやって良い寝床を確保できたけど、野宿する羽目にでもなったら…いや空家は腐るほどあるんだから大丈夫か。

栞の奴だって今ごろは香里と合流しているだろうから大丈夫だろう。香里はサバイバルなんかに強そうだからな。

それよりも今は自分の事だ。テーブルに置いた信号弾に目をやる。とりあえず脱出の手段は確保したわけだが…。

どうしよう?天野への攻撃なんて忘れて、佐祐理さんたちと一緒にいたほうがいいんだろうか?

そうすれば安全に確実に、外へ脱出ができるはずだ。

…いや…駄目だ。今ここで逃げたら一生天野に追いまわされる(何でか知らんが天野が脱出できる事は確信がある)。

そうすれば俺の一生は色々と面倒な事になる。今ここで災いの芽を摘んでおかないと駄目だ。

決心。

そして意識は心地良いまどろみの中へ溶け落ちていった。

 

「ありがとうございました」

朝日が雪に覆われた大地を照らす。朝食を済ました俺達はこの場所を離れる。

「気をつけてくださいね」

「気をつけて」

「二人も気をつけてくださいね。そして…また…会いましょう。ナマモノのいない場所で」

「もちろんです」

俺は歩き出した。そして佐祐理さんたちも歩き出した。お互いの求めるもののある場所へ。

俺が探している場所は狙撃に適した場所。

「俺…天野の事が好きみたいだ」

ドサッ!

何かが大きく動いた音。望遠鏡で見回すと、確かに天野がいた。あそこか…。

ライフルのボルトを操作する。音がして弾丸が薬室に納められた。さあ…やるぞ。

 


用語解説

 

110mm個人携帯対戦車榴弾
陸上自衛隊で使用している、歩兵携帯用の対戦車火器。
これはパンツァー・ファウスト3を国内でライセンス生産している。
84mm無反動砲カール・グスタフ
陸上自衛隊で使用している歩兵携帯用火器。
わかりやすく言うとバズーカ砲。
FAF
ファアリー空軍の事。(戦闘妖精雪風にでてくる架空の空軍)
自慢にならない理由は、雪風のパイロットが性格破綻者だから。(人間関係が上手くいかないと、放火をするような男)
ま…祐一はある意味、性格破綻者ではあるが。
非致死弾
殺傷能力の無い弾丸の事。ようは生かさず殺さず。
グレネードランチャーから発射されたりする。