第6話

夜の顔した学園

 

現在の装備・状況

祐一
マテバM2006M・弾薬×60
グロック36・弾薬×60
デザートイーグル・弾薬×40
名雪
佐祐理
LOST・狩り中
LOST・狩り中
真琴
商店街にて追跡者の足によって死亡
天野
祐一の近辺に潜伏中
北川
森にてハンターγの胃に収まる
香里
栞を探索していると思われる
傷心中。現在逃亡
あゆ
商店街にて狙撃者に撃たれ死亡

 

あれから俺たちは学校目指して走っていた。

ナマモノは全てけろぴーMKUがなぎ倒してくれた。この点に関してはとても良い。しかし…。

「少し…休ませてくれ」

「情けないなー。私なんて全然疲れてないよ。祐一の軟弱者」

「陸上部の部長と帰宅部の体力の差は大きいんだよ。そのうえ荷物ほとんど俺に持たせてるだろうが…」

ホント…何故に俺が名雪の荷物まで全部持たされる?

大量の銃に対戦車火器、その他もろもろで一体何キロあるんだ。歩兵だってこれだけ荷物を持たんぞ。

死ぬ…死ぬ…死ぬ…。疲れて死ぬ…。重みで死ぬ。動けなくなってナマモノに食われる。

荷物の輸送手段がほ…し……い。

「頼む…少しだけでいいから休ませてくれ」

「仕方ないね。ちょっとだけだよ」

そんな決定権がお前にあるのか!って言いたいけどいいません。

「喉乾いた…」

「雪でも食べたら」

「余計に喉が渇くだろ…」

雪山で遭難しても絶対に雪は食べないように。喉は渇くし、腹は壊すし、冷たいわ。死ぬよ。

「しょうがないなー」

そう言って名雪は俺に持たせていた荷物を手にとった。ありがたい。ペットボトルでもあるのか?

そして出てきたのは……確かにペットボトルもあった……しかし…何故にティーセットが出てくる!?

「ちょっと待て…キサマ…俺にそんな物を持たせていたのか」

「生活に潤いは必要だよ。心にいつも余裕をだね。祐一には感謝してるよ」

文句言わない。文句言わない。文句言わない。文句言わない。文句言わない。

言ったら目の前で名雪だけにお茶される。くそっ!せめて………コーヒーセットだったら。(俺はコーヒー党)

俺の心を知っているかは知らんが、名雪は俺の前に紅茶の入ったカップを置いた。

「ふー、落ち着く」

「お茶受けが欲しいね。ケーキとか」

「確かレーション…それもチリマカロニの中にレモンパウンドケーキがあったぞ」

「あ、本当だ」

「レーションのデザートには外れは少ないからな。安心して食え」

ケロピーMKUが周囲の哨戒にあたっているので、わりかし落ち着いて休憩を取る事ができた。

ときどきケロピーMKUが飛び爪でナマモノの首を跳ね飛ばす音が聞こえるが、妥協しよう。

この安全な時間を利用して名雪に今までの事を説明することにした。

「と言うわけで屋上でこの信号弾を打ち上げれば迎えがくるんだ」

「そうなんだ。持つべきものは友達だね」

「名雪は友達少なそうだな」

「沢山いるよ。ただゲーム中に出てこなかっただけ。教室の背景のモブの半分は私の友達だよ」

じゃあ七瀬も………いや……やめておこう。

休憩は時間にして僅か5分ほどだったが、疲れは充分にとれた。そして再び学校へ向かう。

走る事幾らか、ようやく学校へ辿り着いた。

学校の敷地には数匹のナマモノが彷徨っているだけで、香織たちの姿は無かった。

ケロピーMKUが動いた。瞬きする間にあっという間にあたりに動く者はなくなった。

安全を確保できたので、敷地内を捜索してみる事に。そして見つけたもの…。

「これは…栞の拘束具!!」

「拘束具?栞ちゃんSMが好きなの?当然祐一がこれで拘束されて鞭で叩かれたり、ロウソク垂らされたりするんだよね」

…それは、前前回で経験済みです。今更やりません。つーか俺はマゾじゃない!

「ごめんなさい。栞のストールです」

「とりあえず、香織たちが学校まで来たのは間違いないみたいだね…」

つー事は、香織たちがここで何らかのトラブルに巻き込まれたのは間違いない。

とりあえず辺りに香織たちの物らしき血痕はない。今のところ命の心配はない…と思いたいところだ。とりあえず死の証拠は無いんだから。

「よく見ろよ…雪が乱れている。何かを引きずったあとだ。例えば人とかな…」

雪が乱れた後は、一直線に校舎の中へと続いていた。何者かが香織たちを学校へ連れこんだんだ。

「それじゃあ香織は監禁されてるんだね」

そうだろう。誰かが、ある意図を持って香織たちを連れ去ったのだ。

「おそらく…」

「大変だよ!!監禁には調教が付き物。でも香織は調教が似合うキャラじゃないよ!どっちかと言えば調教師だよ!絵的にすっごい違和感がでちゃうよ!」

「いや…絵ないし」

一応…名雪と香織は親友だったよな。心配どころが間違っているような。

でも……確かに香織はどっちかと言えば調教師だ。調教されるのは似合わない。

まてよ!!確かに香織は攻めだが、一緒に栞がいるではないか!栞は受けで何も問題は無い!

妹栞を調教する姉香織。いいかもしれない。いや…見てみたいぞ!禁断の姉妹図を。

「よし、学校の中へ入るぞ。香織たちを助けてこんな場所からおさらばだ」

「うわっ!なんか祐一凄いやる気が出てきてるよ」

ええ、でますとも。上手くいけば面白いものが見られるかもしれませんからね。

しかし建物の中か…ようやくバイオっぽくなってきたな。

「意外に普通だね」

その通りだった。学校の中は普通に電力供給がなされており、照明が内部を照らしている。

誰もいない事を除けば全てが普段と変わらなかった。

「ナマモノもいないしな」

俺の横にいるカエルもどきを除けば…。

「でも香織たちはどこにいるんだろうね?」

「そうだな…さすがに普通の教室には監禁しないだろうし…地下室とか無いのか、この学校?」

監禁といえばやっぱり地下室。もしくは旧校舎。あとは自宅だな。

「聞いた事ないよ〜」

「仕方ない。とりあえずそれっぽい場所から探していくか。まずは職員室に行って鍵をいただこうか

「そうだね。ついでに成績なんかも操作できたらいいね」

「いや…今更そんな事をしても」

とりあえず生き残るのが大切でしょ。二兎を追うものは一兎をも得ず。

「いい、祐一。チャンスは最大限に生かさないと駄目だよ。ただでさえ祐一は女の子と一緒にいてばかりで勉強してないんだから」

うーん…俺って確かに勉強してないな。ゲーム中で勉強してたの名雪のイベントくらいだしな。

「わかったよ…」

と言う訳で職員室。俺はマスターキーが入ったロッカーの前にいた。

キーピックを懐から取り出して鍵穴に差し込む。この程度の鍵なら15秒ほどで………開いた。

「よし、マスターキーを手に入れたぞ。これで……って本当に成績の操作をしてるのか!?」

「ちょっと待って。………………できた!」

「何をしたんだよ?」

「いままでの成績を全部書き換えたんだよ。あとは書類関係を処分すれば完璧だね」

言って今度はロッカーの前に立った。中には成績関係の書類が詰まっているのだろう。

「はい、祐一の出番だよ」

「俺にどうしろと?」

「ロッカーの鍵を開けて欲しいな」

「…………俺を共犯にするつもりだろ」

「そ、そ、そ、そんなことないよ!全然!」

「どもってるぞ」

「いいから早く開けてよ!」

「逆ギレかよ。まあいいか。開けてやるよ」

先ほどと同じようにキーピックを使って鍵を開ける。………12,3秒。自己ベストだ。

「ねえ祐一。開錠の技術を使って普段はどんな悪事を働いてるの?」

「人聞きの悪い事を言うな。これはあくまでも趣味であって何かするために身に付けたわけではない」

「悪趣味だね。祐一がやってるとあらぬ事のためみたいだよ」

……何故に痴漢を見るような眼で俺を見る?俺が下着泥のためにでも開錠技術を身につけたと思っているのか?

「いいんだよ!現に非常時には役に立っているんだ!」

そう俺は違う!美女ゲーの主人公には確かにそんな連中はいるかもしれないが俺は違う!

なんたって俺は純愛系の主人公だからな。

「で、この紙の束をどうする気だ?」

「簡単なこと。こうすれば…」

この女……何の躊躇もなく書類に火を放ちやがった!ここ室内!

「危ない事をするな!!」

「大丈夫!紙はすぐに燃えるから回りには燃え移らないよ」

こういう奴が火遊びをして大火事の原因を作るんだろうな。真琴とは別意味で物騒だ。

「任務完了。さあ香織たちを探しにいかないと」

「この学校に誰かを監禁するのに都合のいい場所はないか?」

「監禁……それじゃあ、まずはあそこだね」

 

「で、これがそのあそこか…」

俺の捜し求める人はいなかった。だってここは…。

体育倉庫ですか。放課後の体育倉庫にー、突然呼び………何を考えている俺!

「あのな!ここは監禁する場所じゃなくてお互い同意のうえで来る場所!和姦だ、和姦!」

「じゃあ祐一は同意して来たことがあるの!?」

「ないわボケ!!」

「祐一のスケベ!」

「だからしてない!!次だ次!」

「はいはい……」

 

「…………ここは……」

ここにも誰もいなかった。つーかいるわけない。だってここは…。

「放送室だよ。来たことないの?」

「いや…知ってるけどな」

こいつは勘違いしている!目的を履き違えてる。俺が何か不穏な事をすると思っている。

俺はハードボイルドを目指しているのに……周りには分かってもらえてないみたいだ。

「完全防音。中からしか開けられない鍵。人があまり来ない。最強だね」

「そうだな。最強だな。それじゃあ次行こうか」

「祐一…冷たいね」

 

その後も沢山の場所を調べてみたが、栞たちは見つからなかった。

「こりゃあ全部の場所をしらみつぶしに探すしかないな」

「祐一、そこ危ないよ」

「ん、何もないぞ」

「赤外線探知があるよ」

「え?」

「あーあ。引っ掛かっちゃった」

「え?冗談だよな?」

赤外線は人間の目には見えないから赤外線だ。別に名雪は特殊な器具を見につけている様子もないし。

「本当だよ。私可視域が普通の人より広いから赤外線がみえるんだよ」

……秋子さんの遺伝子を引き継ぐものの特性か。(もう何が起きても疑問には思えないらしい)

しかし別に探知に引っ掛かったっていっても何も起きないな。

ショットガントラップが発生するとか指向性対人地雷が発動するとか。

ん……何か足音がするような。気のせいか?いや、違う!間違いなく何かがここに迫っている!

「こんな事ならMXスモークでも用意しておけばよかった!!」

マテバのグリップに手をかけ安全装置をはずす。弾倉を引き抜き、弾丸後部の雷管をチェックする。

問題ない。6発撃てる。さて……何が飛び出してくるのか。自然とグリップを握っている手に力がこもる。

来た!!ハンターが3匹、隊列を組んで押し寄せてきた。

「シャアァァ!!」

「ガァァッァァ!」

「シギャアアァァ!!」

まったく!センサーと連動して兵隊が押し寄せてくる。この学校は何時からこんな風になったんだか。

「名雪、行くぞ!」

「頑張ってねー」

「いや、お前も戦ってくれよ」

「祐一。女の子に銃を持たせるのは良くないよ。志のある兵隊は女子供を戦場に巻き込まないものだよ」

正論。まったくの正論だ。でもこの女が言うと……何故かトリューニヒトを思い出したよ。

と、名雪に時間を割いているヒマはない。俺は迎撃の準備を整えた。

銃を構えて狙いを定める。普段は学生の声が響き渡る廊下にリボルバーの大きな爆発音が2回響き渡る。

「避けただと!!」

狙いは完璧だった。しかしハンター達は依然健在でこちらに向かってきている。

俺は発想を転換した。迎え撃つのではなく、逆に突進をしたのだ。守れば狩られる!

「ガァァッァ!(俺を踏み台にした!?)」

空中に舞った俺はハンター1の後ろに控えていたハンター2の眉間に銃口を狙い定める。

発砲!眉間に大穴が開き血が噴出す。そして俺は華麗に着地……は、できなかった。

血に塗れた床が俺の足をすくった。

「シャアアァァァ!(よくもジーンを!!)」

容赦なくハンター3が床に這いつくばっている俺に襲い掛かってくる。ちなみにハンター1はけろぴーMKUが倒した。

右腕を振りかざし俺の首を跳ねようとする。反射的にマテバの銃床で腕を払いのけた。

しかしそれがまずかった。一回の攻撃を防いだ代償にマテバが大きな音を立てて床に転がる。

そして俺はマウントポジションを取られた。

現代格闘技においてマウントポジションに対する手段は……ああ、くそっ!忘れた!

「シャアァァァッァ!!(こいつ、怯えてやがる)」

ハンター3の右腕攻撃。祐一は右手で受け止めた。

ハンター3の左腕攻撃。祐一は左手で受け止めた。

ハンター3は両腕が塞がっている。祐一は両腕が塞がっている。

両手が使えない人間とハンター。ハンターには牙があって人間には牙がない。つまりこの状態では…

 

ハンター>人間

 

「た、助けてくれ!」

「同じことを言った私に…祐一は何をしたの?」

「あの………何もしませんでした」

あ、あれは名雪の方が先に俺を見捨てたから……。ってことはどっちにしても俺たちは助け合うことはできないのね。

憎しみあってちゃ駄目だよ、ク○ス!!

「ひっ!ひっ!ふー!」

避ける!避ける!避ける!恐ろしいほどの速度で繰り出されるハンターの噛み付き攻撃を避ける。

「知ってる?首をはねられても、しばらくは生きてるから首をはねられた事が自分で分かるんだって」

構ってるヒマなし!つっこんでるヒマなし!切羽詰ってるのよ!

「科学的に証明されてることなんだよね」

つーかこのままだと首チョンパじゃなくてのど笛噛み切られて噴水巻き上げる!ああ!その方が痛そうだ!

「首を落とされても噴水は上がるよー」

「人が口に出してないことをつっこむな!」

「祐一の思考パターンは単純だからね」

「大きなお世話だ!!」

ちなみにこの間に15回ほどハンターの噛み付き攻撃を避けてます。

「ガァァァァーーーー!!」

怒ってる!無視してボケツッコミしてたからハンターが怒ってる!

こうなったら…こうなったら…必殺!!

「巴投げぇぇぇぇーーーーー!!!!!!!」

こんなこともあろうかと通信教育で体得した柔道でハンターを思いっきり投げ飛ばす。

そしてハンターが再び襲ってくる前に転がっていたマテバに手を伸ばす。そして発砲。

リボルバーの心地よい銃声が廊下に響き渡る。

後には荒い息遣いの音と動かなくなったナマモノが残った。

「はぁーはぁーはぁー」

「何とか勝ったね」

「名雪……お前って奴は…」

「ハンターとエヴァシリーズって似てるよね?」

「もういい……話が進まないと困るから先に進むぞ」


用語解説

 

チリマカロニ
MREレーションのメニューの一つ。意外に美味。
お好みで付属のタバスコを入れるのも良し。
レモンパウンドケーキ
MREレーションのデザートの一つ。美味。
他にもオレンジ味、チョコレート味などのバリエーションがある
MXスモーク
赤外線と目視を無効にする煙。