第7話

佐祐理さんの事情

 

さてさて体育倉庫、放送室と調べた俺達の次の目標は一番近いところにある技術室だ。

「ここにも誰もいないね。次行こうか」

「いや、ちょっと待ってくれ」

俺は棚にかかっている鍵をキーピックで外すと中からペンチを取り出した。

さらに懐から357Mag弾を数個取り出し机の上に転がした。

「どうするの?」

「こうするんだ」

弾丸を万力に挟むと、ペンチを使って弾頭部分を暴発しないよう慎重に外した。弾頭は捨てずに取っておく。

同じ事を数回繰り返して弾頭がなくなった薬莢だけが机にいくつも残った。さてこれからだ。

そのうちに幾つかから火薬を取り出して集める。それを火薬が入ったままの薬莢に注ぎ込む。

そして弾頭を再び付け直す。これで通常より炸薬の多いホット・ロードの出来上がりだ。見分けがつくように薬莢を赤で塗って仕上げ。

さらにそのうちの数個は、同じく棚から拝借した鉛を溶かして作った弾頭をはめ込む。

これで俺特製のソフト・ポイント弾の出来上がりだ。対生物殺傷能力はすさまじいだろう。こちらは青で塗って見分けをつけた。

「はい終了」

「まさに職人の技だね」

「フッ…」

「でも所詮素人芸だから何が起こるかは分からないけどね。ま、怪我するのは祐一だからいいけどね」

「嫌なこと言うなよ…」

部屋を出た俺達は各々の教室を調べながら先へと進んだ。そして次の大きな部屋にたどり着いた。

「校長室だね」

「誰もいないな」

考えてみれば校長室に入るのはこれが初めてだった。よしっ、せっかくだからアレをやってみよう。

「全て…シナリオ通りだ…問題ない」

「…………祐一…椅子に座って何やってるの?」

「えらい人の真似事だ」

「軟弱者のくせに」

最後の仕上げに残っていた全ての教室を調べてみたが、何もみつからなかった。

ただ時々仕掛けられていた赤外線センサーだけが無人の教室を監視していただけだった。

「どうしよう…香織たちが見つからないよ」

「…………………」

「どうしたの?黙り込んで?」

「いや…一箇所だけ調べ忘れていた場所があるのを思い出してな」

「じゃあすぐに調べに行かないと」

「うーん…本当は行きたくないんだよな……あそこ」

「はい、我慢我慢。ふぁいとだよ」

「しゃーねーな…」

「で、どこに行くの?」

俺は黙って歩き出した。あんな場所に行きたくない。……………着いてしまった。

生徒会室。プレートにはそう書かれていた。ゲスの本拠地なんだよな…ここ。

「生徒会室…すっかり存在を忘れてたよ」

「俺は永久に忘れていたかったよ…」

ここまで来て今更引き返すわけにもいかんだろうな。俺は覚悟を決めてドアを思いっきり開け放した。

「お、お前は!!」

「フッ……まず最初にここに来ると思ってましたよ。そうこの僕…生徒会長である私のもとへ」

「い、いや…俺達は…」

ここ来たの最後なんだけど。できれば来たくなかったし。こんな場所。

「そう…今この町で起こっていることに私が関わっている。君達が思っているとおりだ」

……思ってません。つーか、今の今まであんたの事なんて忘れてたよ。

「だから…」

「何かもシナリオどおりのことなんだよ」

……できの悪いシナリオだけどな。

「人の話を聞けよ!!」

「そして君達の冒険がここで終わるのも…」

聞いてる気配0。どうもこいつの頭の中では死海文書でもインプットされているらしい。

「あかん…完璧に自分の世界に入ってる…」

「上に立つ人っていうのはあんな感じだよ」

「だから嫌いなんだ!あいつを!」

「まあまあ」

ちっ…。こんな奴香織たちさえ健在なら無言で銃で吹っ飛ばしてやるのに。

「君達が探している二人はここにいる。人質としてね」

久瀬が指を鳴らすと後ろの壁がせり上がり中から縄で縛られた香織&栞が現れた。

生徒会長!こんな生徒会室にくだらない仕掛けをつくるなよ!!学校の予算で作ったんじゃないだろうな!?

いや、きっとそうだ。こいつは公共の予算を私物化してるに違いない。証拠はないけどそうに違いない。許せん!

「祐一さん!」

「相沢君!名雪!」

「待ってろ、今助けてやる」

俺はすばやくマテバを構える。しかし久瀬も懐から何かを取り出した。

あれは……デザートイーグルの1,6倍のパワーを持つS&W・M500マグナム!

あんなもので撃たれたらあっという間に人間がひき肉に早変わりだ…うかつに動けない。

「そこの女性には彼女達同様に人質になってもらう。だが…君には死んでもらう。あの羽付き女のようにな」

「あの羽付き女だと!あゆのことかぁーーーっ!!」

「祐一…あゆちゃんが死んでもたいして悲しんでなかったんじゃないの?」

「いや…久瀬の台詞のせいでつい」

名雪の言うとおりです。別にあゆが死んでも悲しくありませんでした。

「それに上半身の服が破け散ったり、金色に光り輝いたりしないんなら、その台詞は止めておいた方がいいよ」

「す、すまん」

まったくその通りだ。たいして怒ってもいないし、マッチョでもない俺。ちょっと反省。

「ひ、人の話を聞きたまえ!」

「わかった、わかった。聞いてやるから続けろよ」

「フフフ…怒るのは勝手だが、こちらに人質がいることを忘れたかね」

先ほどまで俺に向けられていた銃口が栞たちに向けられる。クソっ!このゲス野郎が!

「貴様!それでも生徒会長か!外道!」

「誉められたと…思っておきますよ」

なんて野郎だ!まったくお約束の行動ばかり!恥ずかしくないのか!?

「祐一さん!私に構わず撃ってください!この人を生かしたらもっと沢山の人が死ぬことになります!!」

「栞……」

俺は覚悟を決めて銃口を久瀬の右腕に向ける。上手くいけば人質を無傷で助けることができる。

だが失敗すれば…。銃を持つ手が震えるのが分かる。俺には重過ぎる。

「ちょ、ちょっと待ちなさいよ!いい栞、何万の他人よりも少しの身内よ。相沢君!銃を下ろしなさい!」

「お姉ちゃん!それでもヒロインですか!?私、妹として恥ずかしいですよ!」

「私は脇キャラよ!死んだら恥も何もないでしょうが!」

「英雄にはなれます!」

「えーっと…俺はどうすればいいのかな?」

「撃ってください!」

「撃つな!」

どうしよう。なんか真面目にやってるのが馬鹿らしくなってきた。

「なあ名雪。ここはどうするのがいいと思う?」

「そうだねー。撃った方がいいかな」

「どうして?」

「撃たなかったら祐一は殺されそうだし、私もあの変態さんに何をされるか分からないからね」

「うーん」

「それに最悪でも一人しか殺されないだろうから撃った方が利益が大きいと思うな」

「それも……そうだな」

決めた。俺は…久瀬を撃つ。再び銃口を久瀬に対して向ける。

「き、君!それでいいのかね!?大切な人の命がかかってるだろう?」

あ、ちょっと焦ってる。意外に…いや、お約束通りに小心者だ。

「オラァ!!」

「ぶべらっ!」

「え?」

一瞬何が起きたのか分からなかった。先ほどまで縄で拘束されていたはずの香織が久瀬を殴りつけていたのだから。

唖然とする俺を横目にさらに激しい突きが繰り出される。

「オラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラ」

「ひゃぶ!へにゃら!うびょろ!はぶはぶぁ!」

ああー…みるみるうちに久瀬の顔が…あのイヤミ面が…北斗風に変わっていく…。

「貸しなさい!」

言うが早く俺の懐からデザートイーグルを奪い去る香織。

ちょ、ちょっと待て!そんな物で撃ったら即死にだ!どうせならこっちのグロックで殴ってくれ。

「あたたたたたたたたた!」

な、殴るの!デザートイーグルの銃底で!1キロ以上の金属の塊で!

ヒィィィ!お、俺のデザートイーグルがどんどん久瀬の血に塗れていくー!後でマニアに売り飛ばそうと思ってたのに!

「これでラストォ!!」

「ヒィィィ!!」

お、俺は思わず叫んでしまった!だって…だって…香織が…久瀬のアレを思いっきり掴んでるんだよ!!

「フヌゥゥゥウ!!」

「………ァ……ゥ……」

あ、もう久瀬には叫ぶ気力すらなくなってる。無理もない。俺だったら死んでる。

 

ぷち……。

 

死んだ…久瀬は今、男して死んだ。俺は泡を吐いて気絶している変わり果てた久瀬に合掌した。

「ありがとう。役に立ったわこの拳銃」

「やるよ…それ」

血に塗れ、肉片がこびり付き、さらに確実に銃身が歪んでいるだろう物を返して欲しくは…。

しかしどれくらいの力を込めたらこれだけの有様になるんだ?銃剣じゃないんだしさ。

「で、どうやって香織は縄を解いたんだ?」

「相沢君が馬鹿な話をして馬鹿の気を引いてるうちに間接をはずしたのよ。あとはお約束で」

「……お前は忍者か!」

「そんな事よりも私の縄も解いてくれると嬉しいんですけど」

「あ、忘れてた」

急いで栞の縄を解いて自由のみにする。ついでにその縄で気絶している久瀬を縛り上げて転がしておいた。

「で、どうしてまたこんな馬鹿に捕まったわけだ?」

「この馬鹿だけだったらこんな醜態をさらす必要もなかったんだけどね」

「人型の大きなナマモノがいたせいで捕まったんですよ」

「人型ね…そりゃ災難だ」

人型を操ってたて事は、どうにもこいつがこの事件の関係者って事は間違いなさそうだな。

「しかし何でまたコイツはこんな事をしたんだか?」

「聞き出すにもこの状態じゃね…」

一応意識は戻ったものの、貝のように口を閉じてしまっている。

殴ろうが、銃で指一本吹っ飛ばそうがそれは変わらなかった。おそらく 喋る=死 なんだろうな。

「困ったな。もう放っておいて脱出しようか。こいつはナマモノの中にでも放り込んでおけばいいし」

「佐祐理にまかせてください!」

「うわっ!びっくりした。ど、どこから出てきたんですか?」

「たった今、入り口からです。祐一さん、久瀬さんの口を割らせればいいんですよね」

ま、まるで気配を感じなかった。もしかしたら光学迷彩でも使用していたのか?

「あ、まあ…」

「佐祐理に任せてもらえませんか?」

「ど、どうするつもりですか?メスカリンでも持ってるんですか?」

「そうですねー、歯医者なんかいいかもしれませんね」

…………………こ、この人は。なんで楽しそうにそんな事を言えるんだ?

「ねえ祐一。倉田先輩って歯医者さんなの?それにメスカリンて何?果物」

「ばかっ!歯医者ってのは拷問の名前だよ。メスカリンは自白剤だ」

「うわっ!すごいね。尊敬だよ」

「……………………」

そうだった…こいつはSだったんだ。…まてよ…佐祐理さんもS?

「じゃ、じゃあせっかくだからお願いします」

「任せてください!それじゃあ30分ほど席を外してもらえますか」

「わたしは…」

「舞は佐祐理の助手をしてね」

俺達は黙って生徒会室を出て、隣の畳部屋に待機することにした。

部屋を出る時に、久瀬がすがるような目で俺を見ていたのは二度と忘れらないだろう。

自業自得だ。人気のないキャラの宿命だと思ってあきらめてくれ。

 

 

「茶が…美味いな」

「粗茶ですけど」

あれから20分ほどが経過していた。俺達は時間を持て余すのも勿体無いので、食事をとっていた。

最初にレーションで腹を満たして、今はデザートの時間だ。

「うーん…ちょっと甘すぎるかな、このファッジブラウニー」

「疲れている時にはそれぐらいでちょうどいいのよ。あ、このいちじくバーはなかなかね」

ちなみに俺はM&M’Sのチョコレートだけで満足。市販品だからレーションでも安心。

「アギャァァァッァ!!」

突如壁越しに大きく、野太い悲鳴が響き渡る。

「これで32回目の悲鳴だね」

「あの生徒会長、思ったよりも根性があるのね」

「違いますよお姉ちゃん。言ったら殺されるのが分かっているから必死なだけですよ。そうですよね祐一さん」

「あ、ああ…」

いや…俺はこんな悲鳴を聞いても平然としている君達の方がよっぽど疑問なんだけどな。

まあゾンビが街中を徘徊する中で生き延びてきたんだから精神が太くなっても不思議ではないが。

いや…精神が太かったから生き延びれたんだ。……俺…よく生きてこれたな。

「しっかし久瀬がね…あの小悪党がどんな秘密を持っているんだか?」

「小悪党だからたいした情報は持ってないと思うな。わかっても黒幕が誰か、位だと思うね」

「同感ね」

なんだかどうでも良くなってきた…。もうさっさとこんな町を脱出して何もかも忘れてしまえばいい気がしてきた。

「終わりましたよ祐一さん」

そして俺の忍耐が切れる直前になって部屋のドアが開き、佐祐理さんたちが入ってきた。

「あ、ご苦労様です」

別に服が血だらけになってたりはしないな。拷問を終えた直後だとは思えない様子だ。

「で、何がわかったんですか?」

「それはですね」

佐祐理さんの話をまとめるとこんな感じだ。

今回のこのTウィルスの流出騒ぎは人為的なものだそうだ。単刀直入に言えば犯人は佐祐理さんの親父さんだ。

その動機は佐祐理さんを始末するため。この親子は家督争いで不仲になっていたらしく、以前から色々あったらしい。

佐祐理さんをこの町に残して、久瀬を使って(久瀬には立身出世を約束したらしい)始末する。

そのための人質として親しい友人である俺を選んだらしい。(俺を殺すといったのはハッタリだったようだ)

戦闘力の高い舞を狙わなかったのがいかにも久瀬らしいが。なんにしても迷惑な話だ。

「…佐祐理さん…親父さんと何かあったんですか?」

「この前、暗殺が失敗したのが駄目だったのかもしれませんね」

戦国武将みたいな親子だ…この人は。こんな事のためにゾンビがン千体以上か…。最悪の親子喧嘩だな。

ちなみに最悪の兄弟喧嘩は北斗の拳です。死傷者数万なり。

「そうですか…。それじゃあ全て明らかになったところで帰りましょうか」

何もかも嫌になったので…とは言わなかった。

「はい。佐祐理たちも充分に稼ぎましたから」

 

屋上につくと俺は信号弾を取り出した。マッチを点火してすばやく火をつけると距離をとる。

数秒後に筒から赤い光を放ちながら弾が天空目掛けて駆け上っていく。

数分後…俺達の頭上に大型のヘリコプターが現れた。

「考えてみれば…佐祐理さんの部隊なんですよね?親父さんが手を回していたらまずいんじゃ…」

「大丈夫ですよ。あれは佐祐理の私兵ですから」

佐祐理さん…学生が私兵を持つ意味って…。

「うわ、すごいよ!私ヘリコプターに乗るの初めてだよ」

「はいはい、感激するのは後にして早く乗りなさい」

「これで終わりですね。帰って早くアイスが食べたいです」

みんな安心したらしく表情がやわらかい。さっきまででも充分に緊張感がなかったと思っていたんだが、やっぱり緊張はしていたらしい。

さて…次は俺が乗り込む番だ。まずは背中に背負っていた重火器を含む装備関係を積み込む。これはあとで売りさばく大切な物だからな。

乗り込もうとした時だった。背後で爆発音。後ろを振り向くともうもうと濃煙が立ち込めていた。いったい何が?

少しずつ煙が晴れていくにつれて何が起こったか分かってきた。

煙の原因は破壊された床の破片が舞ったもの。そしてその原因を作ったのは…大きい人型のナマモノだった。

……よく見れば…一人じゃない。肩の上にもう一人いる。

「に、逃がしはしませんぞ!!」

ナマモノの肩に乗っていたのは久瀬だった。香織たちが言っていたナマモノはあれか!

「さ、佐祐理さん!あれは久瀬!」

後ろを振り向くと誰もいなかった…。上を見るとすでに上空数メートルに飛び上がったヘリコプターが。

「だぁぁぁぁ!俺を置いていく気か!!薄情者!!」

「祐一さんがあのナマモノを倒して安全を確保したら降りますよー!」

……何か?俺にあのムキムキマッチョのナマモノを一人で倒せと。しかも重火器を全部なくした状態で。

俺は古代ローマ帝国の拳闘士みたいに戦えと!?

「ガァァァァァ!!」

あちらさんは物凄くやる気らしい…。やむを得なく俺は懐からマテバを取り出す。そして青の弾丸を装填する。

引き金を連続で引く。轟音をたて手製の鉛弾頭がナマモノ目掛けて音速で飛び出していく。

少々不安だったが手製の弾は実用に耐えるものだった。ナマモノは6回のけぞり鮮血をふきだした。だが勢いは衰えない。

ナマモノさん……全然堪えてませんね。人間だったらひき肉になってるだろうに。あ、俺がこれからひき肉になるんだ。

「お姉ちゃん!効果がありませんよ!?」

「あのナマモノの装甲は想像以上みたいね」

「……大ぴんちだね」

……高みの見物組みは気楽だな…。……ああいう連中がパンがないなら菓子を食えとか言うんだ!畜生!

一瞬だった。ダッシュをしたナマモノが俺の鳩尾に正確ににコブシを繰り出したのは。早すぎて避けれなかった。

「がっ!!」

口から鮮やかな赤い色をした血が吹き出る。内臓をやられた。赤いな…。いつも見るどす黒い血とはえらい違いだ。

「あ!私よりも凄く血を吐いてますよ」

「別に病気で血を吐いてるわけじゃないのよ」

……もう妬けになってメタルギアソリッド2みたいにヘリに対して攻撃してやろうか!

いや、まだ自棄になるのは早い。空薬莢を排出して今度は赤の弾丸を装填する。今度こそ!

攻撃を終えて油断していたナマモノの頭目掛けて全弾発射する。手に強い衝撃。

火薬の量が多すぎた。手にしていたマテバが俺の遥か後方に放物線を描いて飛んでいってしまった。

多少は効果があったようだ。ナマモノは撃たれた頭を抱えて蹲っている。今がチャンスだ。

しかし武器がない。マテバの弾丸は撃ちつくしてしまった。ヘリに積んだ荷物の中に大部分を入れていたから。

グロックがあるがこんな豆鉄砲じゃ役に立たないだろう。くそっ!このままじゃ。

「祐一さん!これを使ってください!」

さ、佐祐理さん!あなたは俺の天使だ!考えてみればあなたは今回の事件で俺を何度も助けてくれた。(今回の事件の原因も作ったけど)

人気投票があったらあなたに票を入れます。もう羽が生えた小娘に負けることはありません!いや、負けさせません。

おっと、早く中身を取り出さないと。当然バズーカだろうな。…………………えーっと…………剣?これで戦えと?

 

核兵器VS竹槍

 

どうしてだろう…この前読んだ漫画のフレーズが急に頭をよぎった。走馬灯かな…。きっとそうだろうな。

「すいません、荷物間違えました。こっちが正解です!」

……何?この状況でジョーク?いいよね…高みの見物している人は…余裕があって。

文句を言ってもしょうがない。再び投下された荷物にかじりつく。今度こそ竹槍でも入ってるのか?

……良かった。こんどこそロケットランチャーだ。

「いけー祐一!!」

言われるまでもない!ランチャを構える。ナマモノはまだ蹲っていた。まさにチャンス。狙いを定めて引き金を引く。

思ったより反動はなかった。噴煙をあげてロケット弾が発射される。そして正確にナマモノに命中した。

強烈な爆発によってナマモノは見事にバラバラになったようだ。すぐそばに焦げた腕の破片が転がっている。

そういや久瀬は?……屋上を探してみると久瀬は死体で見つかった。よく見れば体中にひどい傷を負っている。

佐祐理さんが拷問でつけた傷なんだろうな。ここに来ただけでもたいしたものだ。

久瀬に手向けを送ると俺はヘリに乗り込んだ。中では佐祐理さんが傷の手当ての準備をして待っていてくれた。

「祐一さんはこれからどうしますか?」

「とりあえず実家に帰って…後は普通に生きますよ。佐祐理さんは?」

「お父様を何とかします。これだけの事をされたんですから黙ってはいられません。舞と一緒に頑張ります」

「頑張ってください」

佐祐理さんはまだ非日常を生きるのか…。ま、俺には関係ない…。俺は普通に生きるんだ。

 

 

「秋子様。学校が沈黙しました。いかがいたしましょう?」

「フフフ…おもしろいですね。祐一さんたちがどこまでやれるか見てみるとしましょう」

「かしこまりました」

 

 

どうしてだろう…。急に背中に寒気が。疲れてるんだな。そう、疲れてるんだ。

「そういえばお母さんはどうしてるんだろう?」

またも寒気が…。気のせいだ。気のせいだ。気のせいなんだよ!俺は普通に生きるんだ!!だがその前に…。

「名雪…ちょっとそこを退いてもらおうか」

最後にやり残した仕事をしないと。

「え…こっちには何もないよ」

「人とナマモノは一緒に暮らせないんだぞ」

らーんらんらららんらんらーらーらーらららー(あの曲)

「な、何もいないもん!」

睨み合うと俺と名雪。緊張はドアが開く音で破られた。

「でちゃ駄目!」

そこには…当然というか何と言うか…けろぴーMKUが隠れていた。

「やはりナマモノにとりつかれていたか…」

らんらんらんらんらららら(ナウシカのあの曲)

「殺さないで!」

「物騒なこと言うなよ。仮にも命の恩人(?)を殺すわけないだろ」

「本当?」

「ああ。あらいぐまのラスカルの様に自然に還ってもらうだけだ」

「…………」

それから数分交渉を続けることでようやく名雪はけろぴーMKUを帰すことを承諾してくれた。

そしてヘリは高度を下げる。

「ほら、最後の別れをすませるんだ」

「うん…。さよなら………祐一」

「はい?」

……油断していた。名雪は陸上部部長。そのキック力はナマモノですら一撃で倒す。

それが俺の背中にぶち込まれた。聖闘○聖矢のキャラのようにギュルルルル!と宙に体が舞い上げられた。

そして……グシャアアアア!!と、どう考えてもそりゃ死ぬだろう!という効果音を上げて俺は地面に叩きつけられた。

「……ガ……あ…あの野郎…」

「さよなら祐一。祐一の父上がいけないんだよ」

……いやどう考えても悪いのはお前と秋子さんと佐祐理さん一家なんだけど…。俺はどう考えても被害者。

どんどんヘリコプターは高度を上げていく。佐祐理さんたちはどうやら名雪の味方らしい。

いや…佐祐理さんの事だから名雪から取り上げて僕にするなり何なりするつもりかもしれないが…。

まあ俺には関係ない。とっとこんな場所からは脱出だ!

ははは!こんな事もあろうかと!(いったい何回目だろう、この台詞)ガンダムなんかによく出てくるワイヤーガンを持ってきたのだ!

どんどん高度を上げるヘリコプターに向かって狙いを定めて…発射!よっしゃ命中!!

ヘリコプターが一定の高度に達したところで俺の体もどんどん浮き上がっていく。これで街を脱出だ。

 

しばらく後

 

手が痛い……。足元が地に付いてなくて気持ち悪い…。一体どれくらいで目的地に着くのだろう?

ふと下を見る…。ハハハ!見ろ、人がゴミのようだ!!はぁーっはっはは!

手を離したら俺がゴミになるな…。真っ赤なゴミに。どないしょう?

あの時素直にけろぴーMKUの同行を承諾していればこんな事にならなかったのに…。

ワイヤーを巻き上げて上に上がれば間違いなく突き落とされるだろう。下はまだナマモノの生息地。俺を殺しても証拠はナッシング。

…どうして俺だけがこんな目に。だいたい今回一番活躍したのは俺なのに。そりゃちょっとは佐祐理さんたちに助けてもらったが。

普通だったら美女に囲まれて酒盛りの一回や二回あって当然何じゃないの!?それが高度数千メートルに宙吊り。

今ごろ上では楽しくやってるんだろうな。今回の事件の思い出話をしたりして。でも俺は宙吊り。

……長い。なんて長いんだろう。この時間。コミケの待ち時間なんかよりもずっと辛い。命かかってるんだし。

もう……どうでも良くなってきた。手が限界だ。どうせ死ぬなら…。俺は懐から唯一残った武器、グロックを取り出した。

「ははははっははははははははははっはは!!!」

乱射乱射。目玉のおまわりさんも真っ青の勢いで俺はヘリに向かって鉛弾を撃ちつづけた。

「あ、祐一!コバンザメみたいだ」

「やめなさいよ名雪。あれでも相沢君は必死なんだから」

「祐一ー。謝るなら今からでも乗せてあげるよー」

こいつらはいつでもこうだ。俺が必死なときに余裕があって、俺の姿を見てあざ笑う。

俺はどうするべきなのだ!決まっている!男として…漢として…なすべき事…。

 

「このレーション…いまいちだな」

「こっちのは美味しいよ」

「どれどれ」

父さん…母さん…あなたの息子は最後まで英雄にはなれませんでした。

 

と言う訳で俺の狂った冒険は幕を下ろした。持ち帰った火器を怖い人に売りさばいた俺は10年は遊べるだけの金を手に入れた。

その金で俺は充実した生活を送っている。

名雪はけろぴーMKUと共に行方不明になった秋子さんを探す旅にでた。

「うー…この土地は熱いね。私が住んでたところとは随分違うよ…」

「シャー―……」

「けろぴーも熱いのは嫌なんだね」

おそらく秋子さんを探し出す前に国家権力に捕まるだろう。

佐祐理さんと舞は今回の事で確執が決定的になった親父さんとの戦いを続けているようだ。

「殺気!!そこです!」

「はっ!!」

「ふぅー。これで今月に入って五人目の刺客ですね…」

「………」

「舞…佐祐理と一緒にいると一生安眠できないよ。それでもいいの?」

「私は…佐祐理と一緒なら構わない」

ハードボイルドな展開が待っているようだ。ま、勝っても負けてもろくな事にはならないだろうが。

香織と栞は普通の生活に戻った。家はナマモノに占拠されたので俺の家の側に引っ越してきた。

「何でもっと早く迎えに来なかったのよ!!」

「お姉ちゃん!喋ってないで足を動かしてください」

「一応美女ゲーなんだから…普通は女性の方が起こしに来るものだと…」

あゆ、真琴、天野の墓は俺が建ててやった。あの世で喜んでいることだろう。

「よう。まあ年に一回くらいは顔を出してやるから…ま、成仏してくれや」

「見捨てたくせに調子のいい事言ってるんじゃないわよ!」

「うぐぅ…ぼく暗殺された意味がなかったような…」

「早くこっちに来てくださいね。私…ずっと待ってますから…」

北川?誰それ?僕知らないよ。俺に友人はいない。(CV大塚昭夫)

全ては順調に見える。でもどうしてだろう…。最近妙な視線を背中に感じることが多い。

俺は唯一手元に残した武器、マテバを常に懐に忍ばせている。弾丸も怪しい人から大量に買い付けた。

ある日ふと目にした地元新聞社の記事にこの街の片隅で奇妙な生物の目撃談が増えていると書いてあった。

そして軽い風邪のような症状の患者が病院に多数やってきていることも…。

一応言っとくけど続かないぞ。続かないんだよ!!