プリクラ
「記憶はなくても、身分証明ができれば家に帰れるわけだ。
おまえ、何か持ってないのか、財布とか」
「お財布はあるけど…」
俺の隣で名雪が首を横に振っていた。
調べてみたけど、何もなかった、と言いたいのだろう。
だが、念には念を押しておこう。
「どれ、貸してみろ」
「あっ…」
俺は少女の手からそれを奪い取ると、中身を取り出して床に並べてゆく。
徹底的に調べてやるのだ。
「…………ロクなものがないな」
「放っておいてよぅっ」
「千円冊が3枚に、期限の切れたCD割引券が4枚、レシートが3枚、テレホンカードが1枚に…
後は紙くずばかり…見事に無関係のものばかりだな」
大体財布にしてみても、おかしい。
女の子が持つような小奇麗なものではなく、まるで落し物をそのまま流用しているかのような無粋な代物だった。
「あ、写真」
ぽろりとお札の間から、ゲームセンターのプリント機で撮れる小さな12枚綴りの写真が床に落ちた。
友達ぐらい写っているだろう。数少ない手がかりとなりそうだ。
俺は手に取り、覗き込んでみる。
すると写真には、本人がひとりで写っていた。
「ぐあ…おまえ、友達はいないのかっ!」
「それ、記憶を失った後に撮ったやつだもの」
何が悲しくて、こんなものひとりで撮る気になったんだよ…
「だって、同じ歳ぐらいの女の子がみんな撮ってたから…」
「はぁ…」
俺は髪をがさがさと掻きむしる。手がかりナシ、というわけだ。
むしょうに腹が立ってきたので、そのシールの1枚を剥がしてやる。
「ていっ」
そしてそれを持ち主の額に貼ってやった。
「わぁ、なにするよぉっ!」
「おまえだっていう証拠だ。それ貼って町を歩いてこい」
「同じ顔がふたつ並んでるだけよ…」
「そうだったな、悪い悪い」
「あーあ、可哀想に…」
名雪がそれを剥がしてやり、少女に手渡した。
「あぅーっ…」
少女は、それを再びシールのシートに戻そうと必死になる。
だが一度剥がしたシールなんて、くっついたとしても、すぐ剥がれるに決まっていた。
それでもどうにか小さな枠に納め直すと、ほっとしたように、シートごと財布の中にしまい直した。
何がそんなに大事なのか、俺にはさっぱり理解できなかった。
「そんなに一人プリクラが好きなら…この写真、パネルにしてやるよ。家にでも飾っておけ」
「……………」
「だからさっさと出て行け!!」