使用法は正しく

 

 ギ……ギ……

 ん…?

 ギ……ギ……

 音がする。

 それは廊下の床板が軋む音。となると、誰かがこの真夜中に忍び足で2階の廊下を歩いているのだ。

 そんな怪しいことをしそうな奴はこの家にはひとりしかいない。

 ガチャ…

 案の定というか、俺の部屋のドアノブが回された。

 ……。

 ぎぃ…とドアが開き、ひとつの影が室内に滑り込む。

 ……。

「あはは……」

 そいつは含み笑いを漏らした。

 そして俺の布団の脇に立つと、何かをごそごそと取り出す。

 ぺりっ!と何かを開封するような音がした。

 暗くてよくわからないが、なにやら俺の頭上にボトルらしきものがあった。

 …ケチャップだ。

 夕べのお返しというわけだろうか?

「3、2…」

 律儀にカウントダウンまでしている。

「1…」

「ゼローーーーーーーー!!」

 俺は飛び起きると同時に、最後のカウントを大声で張り上げてやった。

「わあああああああぁーっ!」

 どすんっ!

 電気を点けてみると、ケチャップを持ったまま尻餅をつく真琴の無様な姿があった。

「あぅーっ…びっくりしたよぉ…」

「なにやってんだ、おまえは」

「え?なにって…そのっ…」

「ああ?夕べの仕返しに失敗して、また大恥さらしたってところか?」

「そ、そんなことないわよぅっ…」

「じゃあ、何か。そのケチャップは夜食か?」

「こ、これ?ケチャップはそのまま食べるものじゃ…」

「食べろ!!」

「え?ケチャップを?」

「今食べようと思って、開封したんだろ。食う気もないのに開封なんてしないよな」

「あぅーっ…」

「ほら、遠慮しないで食べろって」

「……………」

「ケチャップを飲むと体力が回復するぞ」

「……………」

 意を決してケチャップのボトルに口をつけ…一気に流し込んだ。赤い液体がみるみるうちに減っていく。

「あぅーっ…」

「美味いだろ。俺もシャドーモセスでは世話になった

 ケチャップを飲み終わった真琴は部屋から出て行った。その顔は疲れきったオタコンのようだった。

 ………寝るか。

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