猫のいる生活
 

 水瀬家に小さい居候がひとり(?)加わって、俺の生活は微妙に変わった。

「祐一、祐一」

 真夜中に、真琴の呼ぶ声(スネークと呼べってんだ!)に起こされて、悪戯ならスティンガーで返り討ちにするだけだと黙って寝ていると、真琴が必死に俺を揺する。

「悪戯じゃないの、シャーがお腹壊して大変なのっ」

「え………」  眠い目を擦って起き上がり、真琴の部屋へ行ってみると、言われたとおり、中は独特のつよい異臭が漂っている

。  俺がガスマスクを装備すると、シャーと真琴が声を呼びかけた。シャーはよろよろ起き上がろうとするものの、下痢で力が入らないらしい。

「あうーっ………どうしよう」

「お前、寝る前に凍ったレーションなんか食わせたんじゃないのか。寒いところに置いて凍ったものじゃ、低体温症を引き起こすぞ。猫にも人にもよくない」

 真琴のこの顔。俺の指摘は間違っていなかったようだ。

「凍ったレーションは絶対に食べるな!」

「う………」

「かわいいかわいいばっかりじゃダメだ。とりあえずお前はシャーのケツを拭いてタオルでくるんであっためてやれ。俺は部屋の掃除をするから」

「うん。ごめんね」

 真琴は素直に言うことをきく。俺はウエットティッシュの箱を持ってきて真琴に投げると、下からいらないハンカチだのBOOKだのをもってきて部屋を掃除した。  一応、見た目は元にもどった。臭いはしばらく残るだろうがしかたがない。

「シャーはどうだ?」

「少しは落ち着いたみたい」

「じゃあ、今日はそのままあったくしてやれよ。明日になっても下痢するようなら獣医に連れてったほうがいいかもしれない」

「うん」

「じゃ、おれは寝るからな」

 部屋を出ようとする俺に真琴が小さく呼びかけた。

「ありがと」

「おう」

 そういったところで俺は一つ大切な事を思い出した。

「真琴、シャーのことだがな」

「何?」

「今からでもいいから名前を…」

「名前を?」

「ジョニー・佐々木にしないか」

「そんな変な名前いやー。なんでジョニーなのよ!ジョニー・ライデンのこと!?」

「生きて帰れたら答えを教えてやる」

「わけわかんないわよ!」

 …こいつにはわかってもらえなかったらしい…。下痢なのに…。

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