絵本

 

「祐一ーっ、祐一ーっ!」

 どんどんどんどんどんっ!

「なんだよっ」

 俺がそう返すと、がちゃりとドアが開いて、真琴が顔をぴょこんと出す。

「叩くか、呼ぶか、どっちかにしろ。うるさいだろ?」

「いきなり開けたら文句言う。合図しても文句言う。勝手すぎるっ」

「どうしておまえには中間がないんだっ、端から端へふっ飛んでゆくな」

「ねぇねぇ、そんなことよりもさぁ、新しい漫画、買ってきたんだぁ」

 ずずいと部屋の中に押し入り、持っていた漫画を自慢げに掲げる。

「それがどうした。そんなこと、いちいち知らせにくるな」

「でもさ、難しい字が多いんだよね…」

 ぱらぱらぁーっと目の前でそれをめくってみせる。

「おまえがバカなだけだ。あきらめろ」

「何よ、バカバカって…真琴、バカじゃないもん」

「じゃあ、頑張って読め」

「待って待って。そこで考えたのよ」

「聞きたくない」

「祐一だって読みたいよね?」

「読みたくない」

「だから一緒に読ませてあげるから、祐一が朗読して。これで一石二鳥っ」

 とことこと近づいてくると、俺の隣に腰を下ろして、ばんっと漫画を広げる。

「森本レオでお願いね」

「ダメだ!」

「けち!」

「俺の声は大塚明夫なんだ!」

「大塚明夫?」

「この機動戦士ガンダム0083 STARDUST MEMORYなら読んでやろう」

「そんなのいやー!」

「それが嫌なら甲殻機動隊を読んでやろう」

「もういいわよ!」

 ……行ってしまった。

 大塚明夫の声で少女漫画はまずいだろ…。

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