特別任務

 

 昼休みなると、俺は嬉々として踊り場に姿を現していた。

「舞、これをやろう」

「……?」

 隠し持っていた箱を、舞に手渡す。

 箸を止めた舞が俺の顔とそれを交互に見比べる。

「開けてみろ」

 舞が箱をパカっと開けてゆく。

「……」

 そして中から出てきたスプレーをジッと凝視する。

「……」

 横からさゆりさんも一緒になって食べかけのエビフライの尻尾を口からはみ出させたまま、止まっていた。

「ふぇー…なんなんですか、これ…」

 最初に口を開いたのはさゆりさんのほうだった。

「冷却スプレーとC4探知用のレーダーです。正式名称は知らないが、見たことあるだろ?」

「ええ、それはわかりますけど。どうするんですか、これを?」

「舞が爆弾の処理をするんだよ」

「え?そうなんですか」

「舞がどうしてもやってみたいって言うから、調達してきんだよ

「はぇーっ…舞、そんなこと祐一さんに頼んでたんだぁ」

「………」

 相変わらず舞は否定しないので、さゆりさんは本当に舞が自主的に頼んだものと信じている。

 さゆりさんは、今までの舞を一番よく知っている人間である。

 そのさゆりさんの反応を窺いたかったから、俺はさゆりさんにも今回の作戦の件は黙っておくことにした。

「偶然にも今日、爆弾魔が校舎に爆弾を仕掛けたらしい。舞、がんばれよ」

 当然C4を仕掛けたのは俺だ。

 もうそろそろ教師や生徒にも連絡がいくはずだ。

「……」

 聞いてるのか聞いていないのか、舞は食べるもの忘れて、スプレーと向かい合ったままだった。

 これは舞が顔に似合わず正義感が強くて優秀な所を同校の生徒達に見てもらおうという作戦である。

 だが、俺の考えは浅はかだった。よく下調べしておかなかったのがいけなかったのだ。

 放課後、俺の狙い通り学校は大混乱。

 舞はスプレーとレーダーを持って校舎を探索していた。

「………」

 だがいまだに一つのC4も発見できないでいた。

 あれじゃあただ、散歩をしているだけだ。

「しまった…」

 舞はソリトンレーダーを持っていなかった。

 逃げ出す生徒たちは舞になど目もくれない。

「おい、舞っ」

 俺は一刻も早くやめさせるために、そばまで駆けつけた。

「………」

 舞の目が俺の顔に向いた。

「…見つからない」

「わかってる。だったら、逃げるぞ!!」

「そう…」

 まったく、自分の意思というものがないのだろうか。

 俺もそこにつけ込んで今回の作戦を画策しているわけだから、それで文句は言えないのだが。

「もういいんだ。早く逃げるぞ!!」

「あ…」

 閃光と轟音。

 爆発してしまった………。

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