歴戦の…
「見ろ、これを」
1階の廊下で舞を見つけると、俺は先ほど奪い取ってきた舞踏会の告知をその眼前に突きつけていた。
「チラシですね。なんのですか?」
「…近すぎて見えない」
「我が校恒例の舞踏会だ」
「ああ、生徒会主催のものですね。毎年この時期になると行われるんですよ」
「…近すぎて見えない」
「らしいな」
「で、それがどうしたんですか」
「舞が参加する」
「ええーっ…本当、舞っ?」
一歩下がって、舞が俺の手に持つプリントを見た。
「…?」
「するんだよな、舞ッ」
舞が否定する前に、強引に押し切る。
「………」
すると昼間と同じように、やはり反論する気配すらない。
今はこれでいい。舞に必要なのはきっかけなのだから。
「ふぇーっ、舞が参加したらみんなびっくりするよ」
「佐祐理さんも一緒にどう?」
「いえ、佐祐理はドレス持ってないですから」
「そうか、残念」
「…私も持ってない」
「でも、佐祐理さんのドレス姿も見てみたかったなぁ」
「いえいえ、佐祐理のような平凡な女の子には似合いませんからーっ」
「…私も持ってない」
「そんなことないって。舞よりは似合うと思うぜ」
「そんなことないですよぅ。舞にはかないません。でも、舞がドレス持ってたなんて知らなかった」
「…私も持ってない」
「え?舞、ドレスもってるんだよね?」
「…持ってない」
「えーっ、それなのに参加するって言うの?」
「…言ってな…」
「困った奴だなぁ。だが安心しろっ!俺がなんとかしてやるよ」
舞の声を遮って、声を張り上げる。
だがそれは虚勢もいいところだ。結局抜かりがあったのだ。
ドレスなんてどうすれば調達できるのだ?
しかも、開催日は明後日である。
「へーっ…祐一さん、ドレスなんて調達できるあてがあるんですか?」
「いや、これから考えてみるところだけど」
舞の参加は強引に押し切ればなんとかなることはわかっていたが、ドレスの調達となると俺の手に余る。
「佐祐理さん、持ってない?」
「ないですよ」
「あっさり…」
「俺がシャドーモセスで着用し、
ミサイルの直撃にも耐えたタキシードはダメかな?」
「ダメでしょうね」