盗聴
俺たちは、二年の教室が立ち並ぶ階まで上ってくる。
そして、その中のひとつの教室の前で、佐祐理さんが足を止めた。
「あ、居ますねーっ」
開いたドアの隙間から中を覗いてみて、佐祐理さんが嬉しそうに声をあげる。
「祐一さんは、どうします?」
「今回は悪いけど、佐祐理さんに任せるよ。俺がいたって、邪魔するだけだから」
「そうですか?」
「ああ」
「じゃ、いってきますね」
ドアの隙間に、佐祐理さんが体を滑り込ませる。
ふわりと佐祐理さんのいい匂いだけが残る。
俺にはここで集音マイクを構える(それは犯罪だ!!)意外にすることはないようだった。
「はじめまして、久瀬さん」
そんな佐祐理さんの言葉から、談判は始まった。
教室にはその男の他には誰もいなかったのか、違う話し声も混ざってこなかった。
「今日は署名を戴きに参ったんですよ」
「どういった趣旨のものかな。と言っても、概ね想像は付くけど…」
「………あ………」
「じゃ、話が早いですね」
「確かに早いね」
「舞踏会での舞の行為に関して、私たちの見解です。えっとですね…」
「…ひ……………」
「倉田さん、違うよ」
佐祐理さんが説明を始めようとしたところを、男が口で制した。
「はい?」
「…………………ロ…」
「話が早いというのは、僕の理解がじゃない。その逆」
「協力してくれないんですか?話を聞いてください。そうすれば絶対に納得できますから」
「どんな事実があろうと、生徒会は彼女を弁護しないよ」
「そんな!」
「…………し……」
しばらく後
「すいません祐一さん」
「あ、え、さ、佐祐理さん」
「佐祐理の力が及びませんでした」
「そ、そうですか」
ごめんなさい佐祐理さん。
俺、途中から佐祐理さんじゃなくてトイレからの声を聞いてました。