「…あ」
いつもの通学路を歩いていると、名雪が小さく声をあげて立ち止まった。
「……」
そして、じ―――――――っと向かいの家の軒先を見つめている。
「どうしたんだ?まだ寝てるのか?」
「猫さん…」
「…は?」
「猫さんが居るよ…」
複雑な表情の先に、確かにこげ茶色の猫がうずくまっていた。
「可愛い…」
頬を赤く染めて、とろんとした表情でじっと見つめる。
「可愛いよぉ…抱きしめたいよぉ…」
よく見ると、目が少し潤んでいる。
「美味いのか?」
「え?」
「美味いのかと聞いている?猫は食べられるだろう」
「そんな事ないよ!祐一おかしいよ!」
「分からないのか…取り敢えず食ってみるしかないな」
「やめてよ!!ま、麻酔銃なんて構えないで!」
「生け捕りにすれば腐らない!それに色々と利用できる」
「ねこさん逃げて!」
「あっ……」
俺たちの争いの雰囲気を察したのだろう、猫はあっという間に逃げ去ってしまった。 「美味そうだったのに…」
「この人でなし…」
「何か言ったか?」
「何も言ってないよ。ほら、お腹が減ってるなら私のカロリーメイトをあげるから、早く学校に行こうよ」
「仕方が無いな……」
「もっと食わせろ」