雪が降っていた。重く曇った空から、真っ白な雪がゆらゆらと舞い降りていた。冷たく澄んだ空気に、湿った木のベンチ。
「…………」
俺はベンチに深く沈めた体を起こして、もう一度居住まいを正した。
屋根の上が雪で覆われた駅の出入り口は、今もまばらに人を吐き出している。
白いため息をつきながら、駅前の広場に設置された街頭の時計を見ると、時刻は3時。
まだまだ昼間だが、分厚い雲に覆われてその向こうの太陽は見えない。
「…遅い」
再び椅子にもたれかかるように空を見上げて、一言だけ言葉を吐き出す。
視界が一瞬白いもやに覆われて、そしてすぐに北風に流されていく。体を突き刺すような冬の風。そして、絶えることなく振り続ける雪。心なしか、空を覆う白い粒の密度が濃くなったような気がする。
もう一度ため息混じりに見上げた空。その視界に足場のような物が見えた。おそらく駅の屋上で何か作業をするときに使うものだろう。
しばらくボーっと見ていると、その足場に誰か女が上って行ってる。何かものすごく嫌な予感が…。
女は足場の一番奥まで歩いて行くと、俺の方を向いた。
予感が確信に変わった…。何かが起こる!
「久しぶりだね、ゆういち!」
………………誰だ?
「そう、私だよ」
だから誰だよ!
「年を取ったね……祐一に急激な老化が始まってきたようだね」
…………何の事?
「永遠の世界の住人のクローンであるが故の宿命……祐一はあと生きて数年。生まれながら既に老いている」
…………………永遠?
「やはり祐一は馬鹿だね」
なんですか初対面で!
「あ、お母さん。全て順調……予定通りだよ」
これ、予定の行動だったの!?
その後、予定通り俺は女の家まで連れて行かれた…。……本当に俺の寿命は僅かなのか……。