(名雪はもう起きてるのか…?)
名雪の部屋のドアは閉ざされたままで、廊下からでは伺い知ることはできない。
ジリリリリリ…ッ!
「なんだ?」
突然、廊下まで聞こえるような大音量で目覚ましが鳴り響く。
「名雪の部屋かっ!?」
よく聴いていると、ひとつの音ではなかった。多種多様な音が混じって、もはや何がなんだか分からなかった。
ここが戦場だったら今頃はさぞかし多くの敵兵が集まってきている事だろう。
「あいつ、何個目覚まし使ってるんだ…?」
ジリリリリリ…ッ!
「………」
ジリリリリリ…ッ!
「…………」
ジリリリリリ…ッ!
「…止まらない」
しばらく待っていたが、鳴り止む気配はなかった。
「もしかして、目覚ましセットしたままで先に起きたんじゃないか?」
自分の声も大音量にかき消されてよく聞き取れない。
「さすがに、この状態で放っておくのはまずいよな…」
やっぱりこのまま放っておくわけにはいかない。とはいえ、勝手に部屋の中にずかずかと入って行くのもためらわれて。
「少しだけ様子を見てみるか…」
まさかこの状態で寝ているとは思えないけど…。
少しだけドアを開いて、部屋の様子を伺ってみた。女の子らしい装飾。
「…くー」
ベッドの上で、何事もなかったかのように名雪がぐっすりと眠っていた。
「…マジか?」
「…くー」
とても気持ちよさそうに寝息を立てていた。マジらしい。
「…とりあえず、起こすか」
そこはかとなく頭痛のする頭を押さえながら、声を張り上げる。
「名雪っ!起きろっ!」
ドアの隙間から顔を出して、名雪の名前を呼ぶ。
「…くー」
「名雪っ!朝だぞっ!」
「…うにゅう。おはよう祐一…」
やっと起きたか…。
「………………」
「早く準備しろ」
「………………」
「寝ぼけてるのか…」
「し…」
「し?」
「信じられない。祐一、ここがどこだかわかってるの?」
「いや、名雪を起こそうかと……」
「一人で起きられるよ」
断言しよう…絶対に無理だ…。
「わからないじゃないか。あんなに目覚ましが鳴って…異常事態なんだし……」
「異常事態でも普通は男の人は女の子の部屋なんかに入らないよ!そんなの祐一だけ!っていうか祐一が異常!!」
「名雪、落ち着いてくれ」
今の俺が異常だったら、他の主人公達も全てが異常になってしまうじゃないか!
「信じられない…」
俺か…俺が間違っているのか?