ラクス・クライン暗殺未遂事件についての或る青年の考察
デュランダルは本当に犯人なのか?
CE73。
プラント最高評議会議長ギルバートデュランダルはクライン派率いる軍によって戦死した。
デュランダルの死後、新たな議長の座に付いたラクスクラインは、
「前議長ギルバートデュランダルは、オーブに刺客を差し向けて、自分を暗殺しようともくろんだ。
理由は只一つ。当時自分の影武者をしていたミーアキャンベルを本物とするため。
そして、デスティニープランの導入実行のためには、自分という存在が邪魔になるためである」
と、プラントや地球のTVで表明した。
暗殺を仕掛けた部隊の隊長の名前は聴くところによれば、ヨップフォンアラファスという名前らしい。
調べた所によると、彼はザフト軍の兵士であったらしい。
彼はラクス暗殺が失敗すると、自分のMSを自爆させたとのことだ。
おそらく、暗殺の依頼人がばれることを恐れたためだと考えられる。
これだけではデュランダルがラクス暗殺未遂の真犯人であったと思える。
では、本当にデュランダルがラクス暗殺未遂の犯人だったのか?
もしかしたらデュランダルは無実で、犯人は他にいるのではないか?
私はそう思い、ラクス暗殺未遂事件について独自に調査することにした。
まず、参考の為に一般人の声を聞いてみたが
「ラクス様がそういうんだから間違いないんじゃないの?」
「デュランダルさんは前々から怪しかったしなぁ」
「ラクス様の言うことは絶対だ!!間違いない!!」
と、全然当てにならない返答ばかりであった。
これも仕方の無いことだと思った。
ラクスクラインにはなぜか知らないが、圧倒的なカリスマ性が存在する。
彼女がTVで何かを言えば、必ず視聴者は彼女の言うことに賛同する。
まるで過去の旧暦にあったナチスドイツと全く同じである。
いや、それよりもたちが悪いか。
一般大衆の言葉など全然あてにならない。
そう思った私は、次に新聞やTVの編集部の所へ行き、彼等の声を聞いてみようと考えた。
マスメディアならば多少当てになるかもしれない!
そう思った私が馬鹿であった。
「ラクス様はいわゆる被害者の立場だからなぁ、どうも言えないよ」
「彼女が議長が犯人だと言ってるし、もう議長が犯人でいいんじゃない?」
「さあね。議長が暗殺未遂事件の犯人だろうと、そうじゃなかろうと、俺らには関係無いもんね」
一般大衆も馬鹿ならば、マスメディアも馬鹿なのかと、訊いた奴らを殺してやりたくなった。
ラクス様が言ってるから間違いない?
議長が犯人でいいんじゃない?
俺らには関係ない?
ふざけないで!
今まで散々デュランダルを支持していたくせに、そのデュランダルが死んだら、新しい議長に就いたラクスを支持するの!?
貴方達はどこまで自分の意思というものが存在しないのよ!!
自分達で真実を知ろうとすることも考えないの!?
もう駄目。
一般大衆やマスメディアに訊いても、大した返答は帰って来ない。
こうなれば私の知り合いである者達に訊いて見るしかない。
そう考えた私は、昔からの友人であるコメンテーター、エルシードプラントールの家へお邪魔して、ラクス暗殺未遂についてどう思うかを訊いてみた。
「エルシード、貴方はラクス暗殺未遂事件についてどう思う?私はデュランダルが犯人とは思えないんだけれど」
「ジェニファー、僕も君と同じでデュランダルが犯人とは思えないんだ」
「本当!?貴方の考えを是非聞かせて欲しいわ!!」
私はソファーの上で飛び跳ねながらエルシードの手を握った。
「ちょっと待ってくれジェニファー!今話すから手を離してくれないか?」
「はっ、ごめんなさい!それで、貴方はどう推理しているの?」
「ああ。デュランダルがもしラクスを暗殺しようと考えるのならば、ラクスの影武者を世間に出す前に暗殺しようと考えるはずなんだ。
流石に影武者を出した後に暗殺しようなんて、いくらなんでもそんな馬鹿なことはしないだろう」
「そうよね。影武者を出した後に刺客を差し向けるなんて、考えなしの奴が考えることだわ」
「となれば、犯人は別にいる可能性が高い。君もそう思っていたんだろう?」
「ええ。貴方は真犯人について心当たりのある人はいる?」
「う〜ん。心当たりとは違うけれど、僕の知り合いにラクス暗殺未遂事件について調査している人がいるんだ。
名前はモペトフランコ。フリーのジャーナリストだ。彼は今オーストリアにいるから、そこへ行ってみるといいよ」
「ええ。ありがとう、エルシード」
私は飛行機を使ってオーストリアに行き、エルシードから渡された地図を頼りにモペトの家へ行ってみることにした。
モペトの家は確かにそこにあった。
彼の家は家というよりもテントであり、人が2人入りそうな広さであった。
モペトは明るい表情で私を出迎えてくれた。
「やあ!君がジェニファーカサンドラだね。どうぞ、ぼくのテントに入ってくれよ」
「それはどうもありがとう。でも、私に変なことはしないでね?」
「それはしないよ!ぼくは一生独身なんだ!」
私はモペトのテントに入ると、早速彼に訊いた。
「ねえ。貴方はラクス暗殺未遂事件の真犯人について何か手がかりを持っているって、貴方の友達から聴いたんだけど。
何か知らない?」
「うん。知っているというわけでは無いけれど、僕のジャーナリスト仲間であるジェスって言う人に聴いたんだ。
地球連合とザフトの両方と関係を持っていた人物がいたって」
「何ですって!!」
私はモペトの言った言葉に驚愕した。
あの当時の地球連合とザフトは戦争勃発寸前の状態であったというのに、その両方と関係を持っていた人物がいたなんて!!
「その人物の名前はなんていうの!?」
「確か、マティスっていう名前だったなぁ。ぼくもその名前を聞いてまさかと思って調べてみたら、思わぬことが分かったよ」
「それはどんなものなの!?詳しく聴かせて!!」
「うん、わかった。マティスはとある一族の娘だったらしく、その一族は戦争を裏から情報操作をして、何かを行っていたらしいんだよ。
その何かというのはよく分からないんだけどさ。けれど、マティスはどうやらデュランダルと手を結んでは、デュランダルを手助けしたり、
また、邪魔したりしていたらしい」
「一体、何のためにそんなことを」
「ぼくにもよく分からない。だけどマティスはどうやら自分の目的を邪魔する者を排除しようとしていたらしいんだ。
『イレギュラー13』という通称名までつけてね」
「イレギュラー13?」
「ああ。その13人の名前は全員は分からないんだけれど、確か、ジャンク屋組合のメンバーであるロウギュールとプロフェッサー、
南米の英雄エドワードハレルソン、それと、キラヤマトとラクスクライン」
「ラクスクラインですって!じゃあまさか、ラクスを暗殺しようとした人物は!?」
これは世界をひっくり返す大事件だ。
暗殺未遂事件の真犯人がマティスだということが広まれば、ラクス達は飛んだ早とちりでデュランダルを犯人扱いしたということになる!
デュランダルは無実であったということが証明される!!
しかし、モペトは次のような言葉を発した。
「マティスはもうこの世にはいない。マティスはアメノミハシラの天空の宣言が発表された直後、謎の死を遂げた」
「え?」
「つまり、マティスが死んだのはあの戦いが開始される前。ラクス暗殺未遂事件があった前の日に死んだんだ」
「じゃあ、マティスは犯人じゃないって事」
私は大きく落胆した。
マティスが事件の前日に死んでしまっているなんて。
これで事件の真相は闇の中になってしまうのか。
そう思った時、モペトはこんなことを言った。
「けど、だからといってデュランダルが犯人とは限らない。マティスが真犯人でなければ、別の誰かがいるはずだよ!」
「そうね。けど、ラクスがメディアを使って犯人はデュランダルだなんて言ってしまうんじゃ、結局デュランダルが犯人だということと同じよ」
「それをひっくり返すのがぼく達じゃないか!!」
モペトの言葉を聴いて、私はハッとした。
そうだ、自分はデュランダルが犯人じゃないと考えたからここまで来たんじゃないか!
ここであきらめてどうする!
私やエルシード、モペトや他のジャーナリストが諦めてしまっては、真相がラクスの言葉という闇に隠されてしまうじゃないか!
そうだ!
あきらめてはいけないのだ!!!
「ありがとう、モペトさん!諦めてはいけないわよね!!」
「そうですよ、ジェニファーさん!一緒に真相を突き止めましょう!!」
「ええ!!」
それからというもの、私はエルシードやモペトと共にラクス暗殺未遂事件の犯人を捜し続けている。
TVでは相変わらずラクスクラインが平和の歌を歌い、
オーブのトップに立ったカガリユラアスハは世界のリーダーであるかの如く政治を仕切っている。
しかし、世界は平和になっていない。
世界は未だに争いが絶えず、恐怖と混乱に陥っている。
おそらく、彼女等の天下は二桁と持たないうちに崩れ落ち、2人は飢えと貧しさに苦しむ人達の手によって地獄に落とされることだろう。
しかし、その時を待っているだけでは何も変わらない。
早くその時を来させるために、私はこうして暗殺未遂事件の犯人を捜し続けている。
ラクス暗殺未遂事件の真犯人が表沙汰になれば、ラクスの信用はがた落ちになる。
そうすれば、一般大衆やマスメディアはラクスの不支持を表明し、
「ラクスは悪い奴だった」
などと言うであろう。
その時を私は楽しみにしながら、今日も戦い続けている。
そう、過去の事件の真犯人と。
(終)
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